「推し、燃ゆ」が
今年の芥川賞は何だったんだろうと、ちょっと気になって掲載されている文芸春秋三月号を図書館で予約、順番待ちしたが程なく借り出すことがで きた。返却日の前に福岡に緊急事態宣言が出て図書館は5月31日まで閉館となり、返却期限も自動的に1か月ほど延びた。これで気が緩んで暫く読み出さなかったが、そういつまでも、と思い直して読み始めた。
受賞作は「推し、燃ゆ」という、昔で言う追っかけ少女の物語だ。作者は 宇佐美りん、21歳の現役女子大生という。新人のみが受賞の権利のある芥川賞の本領発揮という感が強いような気がしてくる。
とにかく読みにかかるが、自分の生きてきた或いは生きている世界とはあまりに違う世界でちょっと読み続けるのが苦しい。しかし読みながら思う、共感できないが組み立てと言い場面の雰囲気のディテールといい良く書けている、文学的表現に満ちている、こんな文はたやすくは書けない。読み進むと渦巻に吸い込まれるような感覚に陥る。
結局、どうしても共感できないまま読み終えてしまう。何が書いてあったか、とても人には説明困難だ、不思議な感触だけが残る。こんな経験も初めてだ。
何か新しいものがここには確かにある。まだまだ小説も捨てたものではない、芥川賞もなかなかやる、素直にそう思った。
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