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2021年6月 2日 (水)

中国クロスカントリー事故が気になって

5月22日に中国・黄河石林で催されたクロスカントリー大会で気象が急変し21人の死者が出た、という報道があり耳を疑った、21人という人数の多さだ。一体何がと調べ始めた。
このクロスカントリーレースは黄河石林山地马拉松百公里越野賽(黄河石林山岳マラソン100キロクロスカントリーレース)と呼ばれ今回が4回目であったようだ。このイベントは、景泰県が主催し、白銀市党委員会と市政府が後援し、イベントの運営は甘粛省盛京体育文化発展有限公司が管理しているという(Bai-du百科による)。
Photo_20210601235201 場所は、緯度経度では北緯47度東経104度付近の黄河西側で標高2000m程度の山岳部分を巡るコースだ。
Baidu百科にあったコース図を転載する(右)。参加者は100kmコースでは172人だったという。最短の5kmコースでは非常に多くの(1万人レベルの)一般ランナーが参加する大規模なイベントのようでもある。現地時間午前9時にレースは開始されたが正午ごろ天候が急変し20kmから30km地点(チェックポイント2から3の間、急な吹き曝しの上り)で一部 の参加者の連絡が途絶え、競技は中止となった。
この時の気象は具体的にどうだったのか、まずはJAXAの世界レーダー雨量分布図で見てみる(左下、2021.5.22.現地10-11時雨量分布)、確かにこの時202105220203utcamekumo1_間帯に帯状の前線とみられる降水帯が現地を通過している。地表の気温、風等のデータとしてsynopポイントのdataを調べる。問題の発生したチェックポイント3(CP3)はグーグルマップの地図と照らし合わせると(北緯37.0,東経104.22)と読めるが、近くのsynop点の計測値はなく、100km位離れた地点のデータしかない。(Huajialing、(35.38,105.0)標高2450m)。ここでは11時で気温10.4℃が17時で1.2℃に急落、11時-14時で2mm、14時-17時で10mmの雨、風速は8時ごろの前線通過後次第に強くなり北から8-12m/sの強風が吹き続けている。緯度経度の差を考えると問題の起こったクロカンコースではこれより若干早く同様の気象変化が起こったと推定される。
前線状の降雨帯が通過した際、ひょうが降ったという証言がある、予想以上の激しい積乱雲が発生したようだ。マクロな気象予測計算では850hp高度で気温が下がる部分が通過するもののここまでの急激な変化は予測していなかったようでもある(右下図)。2021052206850hp2
しかし、データを見る限りでは異常気象というような天気ではなくメイストームと称されたりもする5月頃の変わりやすい山の天気の一つくらいの感じがする。ここを短パン・ランニング姿で駆け抜けようとしたことが無理だったということの様に思える。いずれにしろ天候の急変は想定すべきであったのに主催者側がきちんと対処しなかったとみえる。


調べるに当たって中国の新聞やネットへの書き込みを中国語で見つけて翻訳ソフトで読んだりしていたが、幾つか思うところがあった。まずはクロスカントリーという現代的スポーツが思いの外中国で盛んなようなことだ。日本では市民マラソンはあってもこんな大規模な市民参加のクロスカントリーレースはあまり聞かないような気がする。もう一つは事故後直ぐに参加者の具体的体験がネットに書き込まれたり、また主催者の非を糾弾する声が一斉にネットに出てくるという思いの外オープンな社会の雰囲気だ、これにちょっと驚く。中国も開かれた社会とすべく前へ進んでいるような姿がリアルに分かってどこか安心を覚えた。世界の未来もまだまだ捨てたものではないかもしれない。

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