講談付きオペレッタ「こうもり」が予想以上に楽しい
またコンサートだ。今回はヨハンシュトラウスⅡ世作オペレッタ「こうもり」が演奏会形式で演じられるのだが進行役の語りが講談師神田紅というところに面白そうだという予感があった。オペレッタは喜歌劇と訳される軽いオペラでありこれと講談という取り合わせは成程いいかもしれないと思わせてくれる。雨が少し落ちる中、食事した博多港沿いの駐車場所から歩いてサンパレスに向かう。
講談だから説明が丁寧でヨハンシュトラウスはどんな人かといったあたりから舞台が始まる。作者であるヨハンシュトラウスⅡ世は音楽家ヨハンシュトラウスⅠ世の息子で、息子を音楽家にさせたくない父親との間で確執があったという。父親の死後、音楽家としての才能が存分に花開き「美しく青きドナウ」などの名曲を次々と世に出していった、こ の「こうもり」はその頃の作であると講談口調で語ってくれるが、そういえばヨハンシュトラウスとは、という説明は今まで聞いたことがなかったのに気づき、これは真にいい企画だと思ってしまう。ヨハンシュトラウスⅠ世は何を作ったんだっけと後で調べると有名な「ラデッキー行進曲」もその一つだとわかる、やっとヨハンシュトラウス一家の活動が見えてくる。こうもり初演の9年後日本では鹿鳴館が開館し鹿鳴館時代が始まっている、そういう世界の鳴動をこのシュトラウスの音楽が支えていたそんな時代というものも見えてくる思いがある。
随所に博多弁を交えた神田紅の語りを除けば舞台は淡々と進む、歌い手は衣装こそそれらしいが振付らしい振りはなく、歌だけのやり取りが続く。舞踏会シーンでもそうだからこれは物足りない。誰か一人でも舞踏会の雰囲気で踊ってくれれば、と思う。落語や講談でもそれらしい身振りを工夫していれるものだ。せっかく講談の語りまで来たのだからもう一歩進めるべきだ。
2時間半弱で終わりまた博多港を歩いて駐車場所に戻る、雨は殆ど止んでいる。
全体としてはなかなかいいコンサートだった。矢張り講談師がいると随分と楽しくなる、いい試みだ。何だか少しづつ前へ進んでいるような気持になるのがいいのかもしれない。
第27回名曲・午後のオーケストラ オペレッタ×講談 新版「こうもり」
J.シュトラウス Ⅱ/喜歌劇「こうもり」(コンサート形式) 【字幕付】
出演 九州交響楽団 指揮 寺岡 清高
講談 神田 紅
[アイゼンシュタイン] 与儀 巧
[ロザリンデ] 内 夏美
[フランク] 三戸大久
[オルロフスキー公爵] 櫻井陽香
[アルフレード] 高田正人
[ファルケ博士] 成田博之
[アデーレ] 鈴木 玲奈
合唱 九響合唱団、九州大学男声合唱団コールアカデミー、RKB女声合唱団、ほか 合唱指揮:横田 諭
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