福岡・サンパレスでファゴットのジャズを聴く
久し振りの嵐が接近する。ちょうどサンパレスでの九響コンサートの日に荒れた天気となってしまった。演奏は夕食後の時間帯だが、嵐ではベイサイドエリアで食事して歩いてサンパレスまでとは行きにくい。
ともかく早めの食事をベイサイドエリアでとって外に出ると恐れていたような風雨だ、煽られて傘が修理箇所で折れる、これではとても歩いてはいけない、短い距離をクルマで移動してサンパレスの駐車場に入れることにした、駐車代がだいぶ高くなるがしょうがない。
この日の出し物は小曽根 真のピアノによ るガーシュインのピアノ協奏曲が目玉のようだがそのほかも現代のアメリカ音楽が並べられていて、ちょっと面白そうだと聴きに行くことにしていた。会場はコロナ明けの雰囲気があるためか人が多い。
バーンスタインの「 キャンディード 」 序曲が最初に演じられる。今振り返ると如何にもバーンスタインとの響きがあった記憶だけが残っていてもう忘れてしまった。
次が小曽根のガーシュインだ、ピアノが中央に引き出されると、開いたフタで後方の演奏者は見えない。そういうものなんだ、改めて感じる。
曲そのものは大して面白い印象がなかった、あーパリのアメリカ人のメロディが出てきそうだというところででない状況が幾度も現れ、それがガーシュインらしいといえばそういうことになる。ジャズの小曽根がもっと出てくるかと思えばそういうわけでもない、クラッシックの小曽根で通している、そこが少々不満な気がしてしまう。そうはいってもしっかりした演奏で拍手万雷となりアンコールということになる。
ここでサプライズがとの小曽根の言葉が出てやにわにファゴット奏者(埜口浩之という人だったと思う)が奥からかき分けて現れてきて、ピアノとファゴットのデュオでガーシュインの「サマータイム」が始まる。完全なジャズだ、ファゴットが素晴らしく乗っていて自由自在にアドリブを吹きまくる、こんな演奏は聞いたことも見たこともない。考えてみればファゴットはサキソフォンに近しい響きのあるリード楽器だ、ジャズに用いられても何らおかしくない、でもこれまで誰かがファゴットでジャズのアドリブ演奏をしたなど聞いたこともないのは、恐らくその楽器の入手性なのだろう、高そうだ。ファゴットは気楽にジャズプレーヤーが手を伸ばせそうな楽器という気がしない、このようにクラシックのファゴット奏者がジャズに手を出すということしか考えられないように思える、そんな風変わりなファゴット奏者はいなかったということなのだろう。そんなことを考えていると演奏はますますボルテージが上がり短いフレーズのピアノとの掛け合いになっていつしか「アイガットリズム」に転じて行くところまで行って終わりとなる。すごいものを見た。
休憩後には、コープランドの「市民のためのファンファーレ」、サミュエルハーバーの「弦楽のためのアダージョ」、が演じられそして聴きなれたガーシュインの「パリのアメリカ人」で締めくくられる、さすがにこれはいい曲だ。印象に残ったのはファンファーレだ、管楽器11名だけが前面に出て半円形に立って演奏される、濁りのないクリアーな響きが立体的な音の空間を生み出していて、とにかくいい。こんな演奏も聞いたことがなかった。
なかなかのコンサートだった、こんな日が続けばコロナだろうが嵐だろうが何でもないな、混んでいる駐車場をやっと抜け出し嵐も収まりつつある夜の博多の街を走らせながらそんなことを思っていた。
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