人類の歴史を学んでいる
昨年の暮れに図書館の特集コーナーに「われら以外の人類」という本が置いてあってちょっと気になったので借りてきて読んでいた。一体我々は何処から来たのかという問いがずっと気になっていたということなんだろうと思っている。 本の名前はちゃんと書くと「われら以外の人類 猿人からネアンデルタール人まで」という、内村直之著2005年刊で17年前の本だ、その後に明らかになったネアンデルタールのDNAが現生人類に一部引き継がれていることやデニソワ人の発見などは無論カバーされていないが、ホモサピエンスの出アフリカ説が主流となったその時点の考え方をトレースできる点で十分よく書かれていると思える。
2足歩行を始めたヒトの始まりはケニアで出土した約700万年前のサヘラントロプス・チャデンシスと考えられており、約200万年前のホモ・ハビリスあたりから急速に脳が大きくなり、(200-180万年前の)ホモ・エレクトス/エルガスタルあたりでアフリカから各地に拡散し始めたようだ(北京原人やジャワ原人などもこの時の拡散に含まれる)。その後(60万年前頃)ホモ・ハイデルベルゲンシスの出現に至りこれからホモ・サピエンスとネアンデルタールが分岐した(15-20万年前)、そして最後にアフリ カで生まれたホモ・サピエンスが10万年前頃から再び世界各地に拡散、ネアンデルタールやエレクトスの子孫に置き換わって現在の人類に至ったという流れが数々のエピソードを交えて語られる。
しかし今読むとこの本の刊行以後の発見が色々とあることも少し調べればわかってくるし、いまだ眠っている化石が沢山あって、人類の歴史シナリオはまだまだ固まっていないのではとも思えてくる。特に近年アジアで次々に発見されてくる原人をどう考えればいいのだろうかという気がしている。
まずはデニソワ人だ。そのDNAがなぜかメラネシア人、すなわち太平洋の島々の人に色濃く伝わっていると解ってきているようだ、どういうことだろうか。数十万年前から既に太洋を渡るすべを体得していたのだろうか。
ピテカントロプス・エレクトスは今はホモ・エレクトスエレクトス(ジャワ原人)と呼ばれているが遺骨の発見された近くから全く違う小型の原人、フロレンシアが発見されている(これはこの本にも書かれている)他、フィリピンのマニラではまた違う種の原人、マニラ原人が今から2年前に発見されており、7年ほど前に台湾の海底で見つかった澎湖原人もまた別種の原人のようだ。出アフリカのシナリオも一筋縄ではなさそうだ。一方でDNAの追跡からは、アボリジニにはデニソワの遺伝子が多く伝わっており直接的子孫かもしれないと言っている人もいるようでもある。デニソワ人はアフリカから来たホモ・サピエンスと交雑しながらアジアオセアニアに今なお存在感を示しているように見えてしまう。
日本人のルーツについても、縄文人のDNAを調べてそれがどこからきているのかどこに伝わっているのかようやくわかり始めているようだ。アイヌと沖縄人に色濃く縄文人のDNAは伝わっているという。
斎藤成也(国立遺伝学研究所集団遺伝研究室)が縄文人のDNAがどう拡散しているのかをYoutube講演で述べているのが見つかって見てみるが結構面白い。しかしこのYoutubeの提供が弘益財団という韓国の財団であることがちょっと引っかかる、研究資金が出ているのだろうか。こんな研究はすぐに政治的な活動や民族主義者に利用されるだろう、研究の独立性が保てるのか、結果の中立性が保てるのか、不安になってしまう。
生物としての人類の歴史の解明は、これから我々はどうなっていくのか長い先行きを見据えるのに重要度が高い研究のように思える、まだまだ解りにくいが注視し続けたいと思っている。
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