台風14号が過ぎて秋が本番
久し振りの大型台風が通り過ぎてやっと秋らしくなった。もうすぐお彼岸だ。猛暑だ猛烈台風だと騒がしいがいつものサイクルで季節が巡る。
今度の台風は色々面白いところがあった。まずメディアの騒ぎ方だ。
目が殆ど福岡市付近を通ることは予測計算で大分前から明らかだったがその時点でも上陸の可能性があります、程度のアナウンスでぼかしていた。そんなに自信がないのかいと思ってしまう。旅行業者から圧力でもかかっているのだろうか。
近づいてくると手のひらを返したように経験したことのない大型台風が来ると危機感をあおる。誰の経験なのだろうか、予報官の人生での経験なのだろうか、言葉がクリアーでない、理性的でない、説得力がないようにも思えてしまう。九州では大量の水蒸気フラックスが宮崎のあたりにぶつかり続けて災害を引き起こしたが、こういうことをきちんと予測し表現し伝える努力をすべきのように思ってしまう。漠然とした危機感を煽るだけではアバウトすぎる。もっとも予測技術もそこまでたどり着いていないのかもしれない。
今度の台風で奇妙に思えたのは、数値予測のMSMとGSMで風速の予測が大きく違っていたことだ。(MSMはMeso Scale Modelの略で、日本付近を5kmメッシュの細かい網目で大気をモデル化し数値計算したもの、GSMは Global Spectrum Model (全球モデル)の略で20kmメッシュの網目で地球全体を計算するがここでは日本付近の解として発表されるものを指す。)
例えば福岡市ではほとんど目が通るという予測にもかかわらずMSM予測計算値は6m/s程度の風速しか事前には示しておらず、吹き返しの風予測も4m/s程度だった、一方でGSM予測値では目の通過前で約15m/s、吹き返しで15m/s弱の値を予測していた。アメダスで計測された風速は目の通過前で10m/s強、吹き返しで15m/s弱で、目の通過前では全体としてはMSMにやや近く通過後の吹き返しではGSMがいい値を予測していたことになる。ゾンデ計測データを見るとMSM計算値は1000mより上空ではまずまずではある。地形の影響で地上付近の風はきっちり弱くなるようにモデル化されているようでありMSMは陸上付近ではすべからく弱めの風を予測しているようだ。GSMでは地上付近を弱めるモデルが大して入っていないため目の来る前の風が山地を抜けて地上を伝ってくるような場合には風が強めに出るように見えてしまうが、目が通った後海上を吹き抜ける北風が吹き返しで入るようになると地形による減衰がなくおおよそ予想通りの強い風が吹いたことになったと思われる。
数値計算による風の予測が完全ではないところに台風の通過では予報はなんかあってないなと感じる元があるように思えてしまう。こんな予測技術の現状では災害予防の立場から大げさに言わざるを得ないのだろう。
所詮未来予測だ、きっちりはなかなか予測はできないのは当然だ。まだまだ人類の科学技術など幼稚な段階にあるのだろう。
100年後には気象も地震もぴたりと予測できるようになるだろうか、もっと先までかかるだろうか、いずれにせよ少しずつ前へ進んでいけばいつかはそこまでたどり着けそうな気がする。そんな未来が見れなくて、残念ではあるが自分のDNAの一部がそこまでたどり着けばそれでいいような気もしている。
(添付図 上左:MSM福岡計算/計測比較 上右:GSM福岡計算/計測比較 いずれも台風14号通過前後 下:MSMによる地上風推定図9/18 22:00JSTの図、台風中心は川内市付近、九州内陸部は殆ど薄い青:5-10m/s、海は大半が薄い緑:15-20m/s以上と予測している )
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