ハンブルクトリオを再びアクロスで聴く
去年の2月に当初は予定されていたハンブルクトリオの公演がコロナでキャンセルされ、そろそろコロナも終息したかという雰囲気にのってやっと開催された。5年前に聞いたことがありその時の印象が良かったので、これは是非にとも聴きに行った。
今回はラフマニノフ生誕150周年と銘打ってラフマニノフのピアノ3重奏曲2曲の演奏となっている。調べるとラフマニノフはピアノ3重奏曲として1891-93年に作曲された2曲があって、最初の曲(後世の人が第1番と呼んでいる曲)は1楽章のみで死後出版されている、2曲目(第2番)はチャイコフスキーの訃報に接してその死に捧 げる曲として作られている。曲はいずれもラフマニノフが二十歳前後の時期に作曲されていてその天才ぶりがうかがえる、ということらしい。
12時に始まって、聴く。1番の方は印象が薄かったが2番は面白い曲だ、長く、転変自在でピアノ中心でもなくせめぎあいが面白い。
ジャズでピアノトリオというとピアノにドラム・ベースというリズムセクションが組み合わさったピアノ中心の編成だが、ここで聴くクラシックのピアノトリオは全く雰囲気が違ってピアノ、バイオリン、チェロの3つの楽器が対等に渡り合って音楽を形成している、それだけに複雑な進行とも感じる。一つ一つの楽器の主張が厳しく響く。ピアノが抑えた演奏になっているように感じるが、位置を少し下げているのだろうか、とにかくバランスがいい。
最初はぼんやり聴いていたが、真ん中あたりで突然弦がピッチカート使った演奏になり目が覚める思いがしてきた、ピアノもピチカートらしい弾き方をしたりする、多才だ。素晴らしい演奏だ。アンコールもラフマニノフのヴォ―カリーズでこちらはピアノ曲として作られたものをラフマニノフの親友で娘婿のユーリ・コニュスがピアノ3重奏曲に編曲したものだったが聴いた感じでは2番の方が数倍いい。とにかく今回はラフマニノフのピアノ3重奏曲全てを演奏しこれを聴くという貴重なコンサートだったと後で改めて思ってしまった。
帰りにホールでこのトリオの新作CDを買う、シェーンベルクのVerklarte Nacht「浄められた夜」だ、ドイツから運んできたものだという。戻って聞いてみると、12音階ではなくて聴きやすい、19世紀末に作られた曲だ。それにしても5月はアールヌーボーの時代の芸術にあれこれ接したな、これも何かの連鎖なのかな、つながっていくことが生きていくということそのものかもしれないな、色々思ってしまう。
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