シンガポール航空SQ321便の乱気流事故
数日前ぼんやりテレビを見ていたらシンガポール航空の機体が乱気流に巻き込まれ乗客1名が死亡したというニュースが飛び込んできて驚いた。乱気流で旅客機乗客が死亡したという事故は聞いたことがなかった。事故の詳細を調べにかかったが、シンガポール航空側が細かい説明を公表していないようでなかなか起こったことにたどり着くのに時間がかかった。本日現在分かったことは以下の通り。
2024年5月20日21時38分46秒UTCにロンドン・ヒースロー空港をシンガポールに向けて離陸したシンガポール航空SQ321便(乗員18名乗客211名)ボーイング777-312ER(登録番号9V-SWM)はミャンマー上空を37000ftで通過飛行中はげしい乱気流に巻き込まれ多数のけが人と一人の死亡者を出しバンコク国際空港に緊急着陸した、というもの。亡くなった一名は心臓系の持病があったようだとも報じられている。事故当時は食事が出されていてシートベルト着用サインが出た直ぐ後だったといわれる。発生時刻は21日7時49分UTC(14時49分バンコク時間)で地上では場所によっては雨が降っていた模様。飛行時の高度速度上昇率データはリアルタイムで機上から送信されるADS-Bデータに基づき FlightAware またはFlightradar24のサイトで30秒ごとのデータとして誰でも見ることができる。今回の事象はおよそ1分間の間の激しい上下運動で30秒毎ではつかみきれないがこの間のより細かいデータ(3.75秒事毎のデータと思われる)がFlightradar24のサイトにグラフで公表されている。これによれば短い時間の間に1600Ft/min(8m/s)の上昇から逆に1600ft/min(-8m/s)の急降下が波状的に起こっておりこれではシートベルトをしていなかった乗員乗客は相当の被害を受けたのも当然と納得される。この時の気象条件は必ずしもまだ明らかにはされていないが、37000ft上空での前線というものは考えにくく午後の時間帯の強い日射で地上付近で立ち上がった積乱雲のTopが成 層圏に入り込んだのではないかと想像される。赤道付近は定常的に雨雲が発達しやすくこの日のこの時刻頃もミャンマーの事故発生場所付近には南北に雨域が伸びている。そういう意味ではこのような事故は特に赤道付近では今後も起こり うるとも思われる。「何はなくともシートベル」につきるのだろう。
2024.6.12追記:事故発生時刻頃(2024.5.21 7:30UTC)の広域雲解析情報図(TSAS1)では50000ftまで伸びる積乱雲が事故地点付近 に観測されていた。
| 固定リンク
コメント