ポールオースターの「鍵のかかった部屋」を読む、面白い
なぜか小説を読んでいると心身の調子が良いような気がしていて、良さそうなのを読むことにしている。つい最近芥川賞の発表があり、これは読まねばとその日のうちに掲載誌を図書館に2作品それぞれ予約した、しかし福岡市全部の市立図書館で抱える冊数が合計してもそれぞれ2冊1冊と少なく待ち行列が長い、3-6か月待ちの状態となった、とにかく待つしかない。その代わりというわけでもないが、このところポールオースターの小説を読んでいて、「ガラスの街」の印象が良かったのもあって、ニューヨーク3部作と呼ばれる残り2作のうち早く貸し出しができた「鍵のかかった部屋」を暫く読 んでいる。書き出しからちょっと引き込まれるような書きぶりでうまい。「ガラスの街」と同じくまた一人の人を追いかける話だ、今度は自分の分身のような親友だから「ガラスの街」とは少し違うが、作者と主人公がかぶっていて、終わりの方で作者本人がこの小説の中でこの小説について僕という主人公として書いてさえいるのだ:”この本の前に出た2冊の本についても同じことがいえる。「ガラスの街」、「幽霊たち」、そしてこの本、三つの物語は究極的にはみな同じ物語なのだ。”。 全体が真実の話だと述解しているように見えてしまう、何なんだこの本は、というところは前の「ガラスの街」と同じだ、読み手に作者が直接話したがっているようだ、そういうことなのだろう。この作品の中で主人公が探しているファンショーという人物は多分主人公の一部なのだろう、なくしてしまった自分自身の分身を探しているのだろう、主人公ということは作者本人でもあるのだろう。そしてそこにあるリアリティーに気づかされてしまう。入れ子になった入りくんだ世界が作り物ではないように感じられ面白く魅力的にすら思えてくる。
これは残りの「幽霊たち」も読まねば。無論図書館に予約してあるが芥川賞掲載誌よりは先に来るだろう、暑い夏もこんな風に過ごせればするすると過ぎていきそうな気がしている。
| 固定リンク
コメント