芥川賞の「サンショウウオの四十九日」を読んでみたら
芥川賞が決まってその日のうちに掲載誌を図書館に予約したがもう5か月待ち位の長い行列だ。少し待ってみたが待ち行列の進み具合は遅々としていて、しょうがないと今回は受賞作が掲載される文芸春秋九月号をヨドバシに発注して入手した。とにかく配達してくれてポイント分だけ少しは安く買えるのがいい。程な
く届いて、のんびりと「サンショウウオの四十九日」から読み始めた。すぐに何だこの小説は、と思ってしまう、何しろ生まれた赤ん坊の中に赤ん坊が宿っていて成長してくるというとんでもない情景が描かれる。1年後に第2の赤ん坊は第1の赤ん坊から取りだされて、立派に成長した後この物語の主人公である一体となった双子姉妹杏と瞬の父となるという設定だ。一体となった双子とは見た目は一人だが概ね二人分の臓器が内側にあって意識は別の二人という設定だ。出生届も2人分提出してもめた末受け付けられるという設定でもある。現実にはとてもありそうにない、共感性が全くと言っていいほど湧いてこない小説だ、そうだよなあ、と思うところがどこにもない。読んでいて結構つらい。こんな小説は確かに書かれたことはない、新しい世界を描いていると言えばそうだ、かといって芥川賞というのはちょっと、と思ってしまう。著者の朝比奈秋は現役の医者という、外科手術を行ったりもしているともある。解剖学的には人の意識は見ることはできない、リアルな臓器と意識は別物だという感覚を抱いて書き始められた小説のように読んでいると思える。でもその部分もそうかなあと思ってしまうところがある。こういう小説が書かれそれが芥川賞を取る、そのことそのものが新しい時代の始まりを示しているのかもしれない、そんな風にも思い始めている。確かに時代は動いている。
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