パソコンをいじりながらものを考えることが増えている。ネットであちこち見ていると、インターネットに浸っていると脳の働きかたが変わってきて脳の注意力、集中力、思索力が減退する、との記事に出くわす、ニコラス・G・カーという人の本の紹介記事だ、こんな事自体が相当に浸っている証拠だ。危ない危ない。
ともかくネットでは本日現在世に流れている話の種で満ちていてついつい時を費やしてしまう。ここしばらく民間旅客機の話題が気になって色々見ているが、最近では737・A320クラス(この業界では単通路機または狭胴機と称する)の更新にまつわる話が面白くなっている。
ボーイング・エアバスの2社が巨大な世界の民間旅客機市場を分け合っていて それぞれ2000機を越すバックログを抱えて稀に見るいいビジネスとなっているが、原油価格の上昇、温暖化問題等々世の中の価値観が移ろってきてこの737・A320クラスにも新しいもっと燃料消費の少ない機体の提供が求められるようになってきている。
航空機の燃費向上にはエンジン性能の向上が欠かせない。しかしこれまでのエンジンの小手先の改善ではもはや大きな向上は期待できない段階まできてお
り、燃費改善に効果的なファンの空気流量を飛躍的に増大する斬新なエンジンが求められている。プロップファンと呼ばれる エンジンがそれに応えうるエンジンで、ファンを極大化しファンの覆いを外したターボプロップとファンジェットの中間のような形をしており、燃費改善が30%にも及ぶといわれる。しかしこのエンジンの実用化にはあと10年くらいはかかるとされ、今現在の要望にすぐには応えられない。
ここへきて、その前段階的な 現在のものより径の大きいファンを持つエンジンなら数年で提供できるとエンジンメーカが売り込んでおり、つなぎのエンジンとして注目されている。
ファンの空気流量を表すバイパス比が今の5程度から11-12位まで大幅に引き上げられ燃料消費性能が10-15%向上するこのつなぎエンジン(GTFやLeapーXというのが製品名だが)に交換することをリエンジンと称しているが、ボーイング・エアバス両社がGOするのは時間の問題とされていた。
しかし、単にすげ替えればいいというものでなくエンジンと機体の干渉もかなり変わりそれなりの改修も必要でちょっとした開発になるのは明らかだ。特にボーイング737
は脚の長さが短くて地面とのクリアランスをとりにくく (今のエンジンでもファンのカウリングをいびつにしてやっと付けていて)このままでは径の大きいエンジンはつけられない。脚の長さを長くすると脚を引き込む主翼のスペースが今のままでは足らず主翼構造に割と大きな変更が必要になる、それに重くなる、全体最適に向かうと改修の域を出て新型機の開発になってしまう、かなり厄介だ。その上 これでそのあとプロップファンがすぐ登場するのではまた新規開発となる、やってられない、とばかりボーイングはリエンジンには後ろ向きとなっている。
エアバスA320の方はもともと脚も長めで大きな径のエンジンもつけることにはさしたる問題もない、エアバスはここぞとやる気になっていたが、ここへきて、リース会社の大物CEOが 多少の性能向上で複雑なエンジンに変えるのは運行全体を考えるとエアラインにとってメリットは殆ど無いと公言しだして、このところエアバスもひるみはじめた。何しろ十数兆円に上る受注残を今のA320で抱えていて仕事は当分ある、リエンジンは737より楽だとはいえ開発のリスクは常に伴う、このまま今の機体を作り続けることに決めてもボーイングがやらない以上、市場を失うということはまず有り得ない、中国とロシアが新エンジンを搭載したこのクラスの旅客機の開発を始めているが世界市場を脅かすとはとても思えない。しかしエアバスにいい機体ができれば明らかにボーイングを圧倒しシェアは拡大できる、さてエアバスがどうでるか、面白いところに来ている。エアバスも止めにすれば欧米以外の国の新開発機の行方が注目される、どちらに転んでもこの先新しい展開となりそうで暫く楽しめそうだ。
こんな話題を世界中のメディアにアクセスしてほぼリアルタイムに追うことが出来るのはネットならではだ。少々頭の働きが鈍くなってもネット依存は止みそうに無い。ともかく世界の今を知ることは思いのほか楽しい、観客が増えたことでプレーヤーの振舞いも変わってきているようにも思える、ネットは世界を変えつつあるようだ。