2024年4月15日 (月)

大谷翔平通訳騒動と笠置シズ子マネージャー事件がどこか似ていて

近頃メディアを賑わしている事件の一つに大谷翔平の通訳賭博騒動があって事実関係の調査の結果通訳による大谷の資産の横領・銀行詐欺ということが明らかになっている。似たような話を最近どこかで出くわしたような気がして思い出していたら笠置シズ子のマネージャーがトランプ賭博にはまって笠置シズ子の資金を使い込んだ事件があったと評伝で読んだのを思い出した。評伝はもう図書館に返してしまっているのでネットで少し調べると昭和25年に350万円の使い込みをしていたことが発覚、マネージャーを解雇された、とある(wikipedia)。当時の350万円は大卒初任給比較からは現在の価値では約30倍の1億円相当と考えることができるようだ、大谷通訳の62億円には及びもつかないが構図は似たところがある。笠置シズ子は当時長者番付で芸能界第2位のポジションにあり、一方大谷には巨額の契約金が動いている、誰からもわかる大金所有者だ。その近辺にこぼれる金を狙った黒いお誘いが飛び交うのは避けようがなく通訳にしろマネージャーにしろごく身近のものが賭博の世界に引き込まれていったという構図が見えてくる。
同じような構造の誰にもわかるお金の集中には将来も同じような事件が起こりそうに思える。
笠置シズ子はほかの理由もあってその後次第に輝きを減じ埋もれていったが大谷はどうだろうか、将来にいいお手本を示すことを期待している。

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2024年2月13日 (火)

笠置シズ子の砂古口による評伝がなかなかで

朝ドラで笠置シズ子が演じられていてなかなか興味深い、ドラマではいろいろ脚色もあるだろう、本当はどんな人だったのだろうと図書館に笠置シズ子の評伝を2つばかり予約してみた。すぐ来たのが「昭和の日本を彩った「ブギの女王」一代記」 というのだったが、それほど印象深い気もせずに内容も忘れたころ次の「ブギの女王・笠置シヅ子 : 心ズキズキワクワクああしんど 」が回ってきた、こちらは予約がだいぶ入っていて2か月以上待った感じだ。砂古口 早苗(さこぐちさなえ)という女性ノンフィクションライターが丹念な資料調査や現存する関係者インタビューに基づいて書いた本で、かなり細かい。おそらく笠置シKasagisizuko ズ子の最も確からしい評伝と思われる。ドラマは勿論創作は多々あるが凡そ事実に従って進んでいるとわかる。
笠置シズ子の名は子供のころには知ってはいたが淡谷のり子の方がテレビで時には歌っていたこともありまだ頭に残っている。淡谷のり子はおばあさん歌手でどこがブルースの女王か、と当時いぶかしげに思っていた。この本を読むと笠置シズ子はマネージャーの大金持ち逃げ事件があったり美空ひばりが入れ替わるように出てきたこともあったのか絶頂期を少し過ぎたあたりで早く歌手を引退したという、それがためにその印象がその後の世代にあまり伝わらなかったのかなとも思ってしまう。これとは別に美空ひばりと山口組田岡会長との深いつながりやひばり母の君臨など戦後の芸能界の良く知らなかった裏事情が細かく書いてあるのに興味を惹かれる。笠置は闇社会とのつながりを拒絶し通して生きてきたという、こんなところもマスコミのひばり母や闇社会への忖度で笠置のポジティブブな印象がその後の世代に伝わりにくかったということに影響しているような気がしてくる。だんだん分かった来るような気持ちになる、なかなかの本だ。

実際はどう歌っていたのだろうか、もう少し笠置の音源や映像を探してみねば、そんなことばかり湧き上がってくる。

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2024年2月 8日 (木)

博多座で染五郎と幸四郎の歌舞伎を見る

博多座では時々歌舞伎の公演があって、今月はせっかくだからと二月花形歌舞伎を見に行った。福岡はこんなところが楽でいい。切符はネット購入で今回は当日博多座で発券としてみたが自動発券機はガラガラで全く問題なく発券できた、次からもこれにしよう。出し物一つ目は江戸川乱歩の「人間豹」という作品を歌舞伎にしたものらしい、新Kabuki0207b作歌舞伎だ。松本幸四郎/市川染五郎の親子が主演という形で、染五郎という名はラマンチャの男で有名だったと記憶しているが、あの染五郎との関係は?と休憩時間に座席でスマホでしらべてみる。ここで演じているのは八代目市川染五郎であのラマンチャの染五郎(六代目)の孫だった、すぐわかる、便利な時代だ。3階の最前列の席だが、3階ではあちこちから、高麗屋!の声が飛ぶ、隣の隣からも発声あり、いかにもベテランという風情の大向うだ。真似してみたくなるがとてもできない。
芝居は新作だがおどろおどろしさや1階から3階までの宙吊りや二役早変わりや、いかにも歌舞伎!という「らしさ」に満ちていて十二分に楽しめた。松本幸四郎/市川染五郎は2つ目の演目である鵜の殿様でも主演として出ずっぱりで体力が良く持つなあと感心もする。時の流れを脈々と伝わっていく歌舞伎という芸能のリアルを見る思いだ。いい芝居だった。
20時頃に地下駐車場から戻る。寒さはまだまだ終わってくれない。

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2021年2月22日 (月)

コロナでコンサートや歌舞伎の有難さが身に沁みる

コロナの緊急事態宣言はまだ続いているが、不要不急の活動はどこまではいいのか分からない、誰にもわからないのだろうと思い、今のところ県外には出ない、遠出も控えて10km圏内くらいで過ごしている。コンサートや観劇はダメという訳でもないのでルールに従って適宜鑑賞することにしている。今月は今のところアクロスに1回と博多座に一回出かけてみた。

アクロスは13日の拡大ランチタイムコンサートと銘打った公演で、ふかわりょう司会の気楽なクラシックコンサートだった。座席は1つおき、入場時自分で半券ちぎり、体温非接触計測、クロークなし、喫食は無し、飲水は決められた場所のみ可、ブラボー等の発声なし、くらいがコロナ対策で、もはやそんなに違和感はない。歯抜けの座席配置では舞台が前の人の頭で遮られることもなく、かえって見やすくていい位だ。肝心の演奏は、メゾソプラノ、チェロ、ビオラ、ヴァイオリン、ピアノ、の気ままとも思える合奏で、歌声と楽器の響きがゆるく心地よく流れる。久しぶりにいい時間が過ごせた思いだ。3時に帰宅。のんびりした午後に潤う。

Hakataza 博多座のほうは19日11時半開演の2月花形歌舞伎昼の部を見に行った。こちらも自分で半券を切って入場、体温非接触計測がある。昼食は売られている弁当を買って、休憩時間に1階フロアに開設されている休憩エリアで食べる。そんなに混んでもいなくて、問題はない。座席はこちらも一つ置き、但し水は座席で飲める。掛け声禁止、位でこちらも違和感ないような気がしていたが、歌舞伎で見えを切るところでどこからも掛け声がないのはやはりふにゃふにゃしていてよくない。掛け声は歌舞伎の一部のようになっていると改めて感じる。
舞台そのものは綺麗で伝統的な美しさがあって、世界に誇れる芸能を感じさせた。はじめの「正札附根元草摺」は勉強不足で何の舞踏か筋書きが解らずじまい。でも女形の女らしさが出色だ。後方の長唄、三味線などは黒い舞台用のマスクをしているところが如何にも現在を表していて面白い。話の筋について戻ってネットで調べるといわゆる曽我ものの有名な舞踏と判る。これ位は知っていないといけないようだ。次の「松浦の太鼓」は語りについていけて楽しめる。赤穂浪士の討ち入った吉良邸の隣にあった松浦邸の話だ。山鹿流の陣太鼓が鳴り響くのだが、そういえば山鹿流は松浦に伝えられた流派だったと思い出す。後で調べると山鹿素行と吉良、松浦との交流の歴史が討ち入り事件の背景にあったようにも思われ面白い。ともかく舞台に引き入られていくとコロナの白々とした世界が色を取り戻したようにも感じられていい。

エンターテインメントの世界はコロナで散々な目にあっているように見えるが、こんな状況になると却ってそれらが不要不急では決してないことが身にしみてわかる。
コロナでは世界中の人々が同時に貴重なことを学びつつある、そんな風にも思えてきた。全てのことには無駄ということがないようだ。

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2015年2月12日 (木)

歌舞伎を観る

歌舞伎というものを通しで初めて見た、気楽に見られる福岡ならではのことかもしれない、福岡の博多座には定期的に歌舞伎の公演が打たれる。
今回は伊達の十役という早変わりの芝Date10 居の初日だ。市川染五郎が十役の早変わりを演じる。鶴屋南北作の『慙紅葉汗顔見勢(はじもみじあせのかおみせ)』というのが正式名称で主役が顔を紅葉の様に赤くして必死に演じるという題だから早変わりがこの芝居の中心であると題からして宣言していることになる。
話の筋は江戸時代の伊達騒動の題材を室町時代に置き換えたもので先代萩とほぼ同じ筋立てとなっている。
10人の役を早変わりするので僅かばかりとはいえ同時に舞台に現れざるをえない場面もあるがそこは顔を見せないようにした代役が目立たないように演じ、せりふを発する頃合までには染五郎がこれにすりかわるという綱渡りのような芝居が展開される。花道を歩きながらすり替わるところまでありこれには唖然とさせられる。
早変わりして登場するとすかさず「こうらいや」の声が3階席のあちこちから飛ぶ。見得を切るところでもまた「こうらいや」、誰が掛けてもいいことになっているのだがとても真似できない。
Hakataza 現在の猿翁の演出だけに宙吊もある、勿論初めて見たが3階席までを一本のワイヤーロープに吊り下がって上がって行くのはさすがに怖そうだ。初日ということもあるのだろうか形相にも緊張した雰囲気が浮き出ている。

 

せりふ語りや謡の全てまでは解らないが芝居には十分ついていけるし面白い、確かにミュージカルだ。しかし長い。長めの休憩2回をはさむが開演から終わりまでおよそ5時間近くかかる。見るのも大変だが役者はもっと大変だろう、これを1ヶ月近く休みなしで毎日続けおまけに1日おきに1日2回公演となる、よくやれるとあきれるばかりだ。オペラ並みの観劇料金というのは当然といえば当然で割安とさえ思えてくる。

 

ちょっと疲れたがのんびりバスで帰る。こんな過ごし方にもだんだん慣れてきたようだ。風も少しは和らいでもう春が近い。

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