九響の定期演奏会を聴いたりランチタイムコンサートでThe 4 players Tokyoを聴いたり、春は忙しい
春は花見だけでなく忙しい。4月から年度はじめということもあるか4月3日の市民ホールコンサートに続けてアクロスのコンサート2つに出かけた。まずは4月11日の九響定期演奏会だ。太田弦のフランスでつなげた演目選定が興味深い。最初はフォーレの組曲「ペアレスとメリザンド」だ、聞いたことがないがと思いながら第3曲のシシリエンヌに至るとなーんだこれかという感じだ、フルートの曲として知られ自分もフルートで数年前に練習していたことがある。座った席 は2階の左袖という舞台の左半分がまるで見えない位置で木管楽器の全体を見渡せないが、木管の響きがいい。次のラヴェルのピアノ協奏曲はアメリカ演奏旅行で仕入れたとされるジャズ風な旋律が所々で聞こえてきて面白い。ピアノ演奏の指使いが上からよく見えてそこはこの席の良さだ、特に第3楽章の丸まるような指使いなど印象的だ。確かにJazz好きのフランスの雰囲気が漂う。アンコールのピアノ「亡き王女のためのパヴァーヌ」(これもいい感じだった) の後 休憩をはさんでベルリオーズの幻想交響曲に至る。久しぶりに聴いた気がして新鮮だ、ティンパニー2セットの打楽器の迫力、チューバ2本の低音の響き、等々楽器編成自体に作曲者の意気込みが感じられる。こんな曲だったっけと改めて見直した思いだ。1830年という、王政復古したフランス・ブルボン朝がまた倒された7月革命の年に作曲初演されている、その騒乱の時代が伝わってくるようではある。混沌を打ち破る強い打楽器の響きがする、そういうことかと勝手に思ってしまう。なかなかのコンサートだった,やはり選曲に惹かれるところがあるようだ、組み合わせがいい感じがする。
アクロス2つ目は4月14日の弦楽四重奏によるランチタイムコンサートだ。演奏はThe 4Players Tokyoという関東のオーケストラのトッププレイヤーによる 弦楽四重奏団だ。前にも一度聞いたような気がするがよく覚えていない。曲はベルクの弦楽四重奏曲、信長貴富作曲今日が初演のドンキーカルテットという曲、そしてベートーヴェンの弦楽四重奏曲第4番でいずれも初めて聴く曲だ。プロヂューサーの藤岡幸夫さんから最初に説明があって演奏に入ったがこんな曲並びの弦楽四重奏のコンサートにこんなにたくさんの人が来てくれたことが一種の驚きであったようだ。自分もそうだがランチタイムの弦楽四重奏と聞くとなんとなく気楽に音楽を楽しめそうと思って聴きに来たという所が多いのではないかと思っている。始まると確かに、難解なところのある曲が並んでいたと感じる。まずはベルクの曲だが全くのシェーンベルク張りの現代音楽だ、口ずさめられるメロディーというものがない。理解を超える音だ、でも音そのものがどうしようもなく美しい、なかなかだ。
次は世界初演となるドギーカルテットだ、こちらは作曲者も観客席で聴く。犬にまつわる曲8つを連ねたものでそれぞれのタイトルから柴犬が出てきたりチワワが出できたりしているようだが、具象ではないので犬好きでもない自分としてはピンと来るところがない、どうしようもないことだ。でも、とにかくここでこの曲が初めて世に出たということそれに立ち会っているというそのことそのものが面白い、初めての体験だ。最後のベートヴェンにくると初めて聴く曲ではあるが何かほっとしたものを感じる。終わってみるとよくできたコンサートだったように思えてくる、特段の休憩もなく、見事な演奏を響かせ続けてくれた演奏家に感謝と尊敬の念を抱かずにはいられない、さすがプロだ。
今日の強風で桜は散ってしまった、するすると時は進んでいく。春は忙しいが楽しい。