2023年1月29日 (日)

ネパールの旅客機墜落事故が気になっていて

2023年1月15日ネパールのポカラで旅客機墜落事故が発生してもう2週間経つが依然事故原因については明らかになってこず気になっている。ここらで現在得られる情報を整理してみる。
事故機はネパールの国内線でイエティ航空691便、機体はフランス/イタリア共同のATR社製72人乗りコミューター旅客機ATR72-500(エンジンはP&WカナダのPW127Fターボプロップ双発)、事故時の搭乗は乗員4名乗客68名で全員死亡。機齢は15年6か月で普通の感じだ。事故機は現地時間1月15日10時33分(4:48UTC、現地時間はグリニッチ時であるUTCに+5:45))カトマンズ国際空港を離陸し、ポカラ空港に向かっていたところポカラ空港北西の滑走路延長上の川の土手に墜落した。事故発生は11時過ぎとみられる。管制への異常連絡は無かった。ポカラ空港の滑走路は12-30(進入が120度又は300度の方向の滑走路)で、ポカラの管制は東南(30)からの進入を伝えていたがパイロットが直前に北西側(12)からの進入Map1_20230129224101 に変更した。多くの機体は30側から進入しておりILS機器も30側に設置してある。当日の気象はポカラの6:00utcのsynopデータでは180°(南)の風5ktだから、若干の背風となる30側の進入を嫌ったとも思える。客室からの映像がFacebookのストリーミングに残されているが墜落寸前までは普通の飛行にみえる。地上から撮られた墜落寸前のビデオからはファイナルターンをしているところでバンクが増えてそのまま地上に突っ込んだように見える。
フライトレコーダとボイスレコーダは回収され間もなくシンガポールで解析されると伝えられている。当初はフランスに送られると伝えられていたがシンガポールで解析と決着したようだ。機体製造国の解析では中立性に疑問を抱いたのかもしれない。
機器の不具合については明らかではないが機上の飛行データを地上にリアルタイムで送るADS-Bの飛行高度速度データが異常で、送信も飛行途中で終わっており、少なくもこのシスTuirakumae テムには不具合があったことは明らかなようだ。このため事故があるとすぐに公表されるFlightdata24によるデータが今回は得られていない。フライトレコーダの読み取り結果公表まではこれ以上のことは解らないというのが現状だ。
機器の故障としてファイナルターン中の事故ということで、例えばファイナルターン中にフラップを下ろそうとしたが片側がうまく下りず片フラップになって操縦輪では負けてしまった、とかが考えられるがそこまでの故障がありうるのか、分からない。地上からのビデオ映像では失速-スピンというのでもないように見える。
副操縦士はこのフライトがうまくいけばこの後機長に昇格となることになっていたと伝えられており、事故機の機長はその最終判定役として振舞っていて操縦の修正が遅れたとも考えられなくもないが、安全優先は機長も勿論熟知しておりその線は薄いように思える。

どんな教訓をこの事故はもたらしてくれるだろうか、フライトレコーダとボイスレコーダ情報で多くの疑問が解かれると期待され、解析が待たれる。

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2022年4月17日 (日)

中国東方航空MU5735の墜落が

先月中国で巡航中突然墜落した737の事故の原因がまだ明らかにされなくて気になっている。
2022年3月21日、中国・雲南省昆明市の昆明長水国際空港を広東省広州市の広州白雲国際空港に向けて05:15 UTC に離陸した中国東方航空のBoeing737-800、MU5735便は06:20UTC頃通常通り29100ftの巡航高度から降下を始めたが06:22 UTC頃広西チワン族自治区藤県付近の山中に墜落した。正確な墜落地点の情報はないが、比較的低い山の連なる山地で標高500-1000m程度とグーグルマップからは推測される。乗員9名乗客123名は全員死亡。墜落現場は大きな穴が開き部品の散乱範囲は狭い。翼端のウイングレットだけは10km位離れた地点で発見されている、高速の降下で最初にここがちぎれたのかもしれない。近くの鉱山の監視カメラが撮ったとされる映像や目撃者談ではかなりの急角度で高速で墜落激突したように思える。フライトレコーダ、ボイスレコーダは回収され米国に送られ解析中らしい。米国の事故調であるNTSBが依頼により協力している。1か月以内に調査結果のあらましが中国側から発表されるという。
現在公表されているデータはリアルタイムで送られてきていたADS-Mu5735final150secondsaltitudespeedverticBデータだけではある。
これを見ると、高度約30000ftで巡航飛行後着陸に備えエンジンを絞って降下しているようだが降下開始タイミングそのものは通常通りのようだ、しかしその後は急な降下となって急加速しており明らかに操縦がおかしい、部分的に上昇したりもしている。運動エネルギーと位置エネルギーの和を計算してみると平均のグライドパスは滑空比5-6程度で降下しておりエネルギー的には落ち着いていて、エンジンを絞ったままの状態でEnergyhight エレベータ操舵で減速上昇・加速降下を行っているように見える。データは高度およそ3000ft(1500m)で終わっていてグラフから読み取って計算するとこの時の降下角は36度位で異常に急な降下には違いないが垂直降下ではない。監視カメラといわれる映像が垂直降下に見えるのは見ているカメラの向きが関係しているのかもしれない。
これだけでは原因は分からない、エレベータ操舵系統の故障・破損かもしれないし、パイロットの意図的操舵ということも考えられないわけではない。エンジンパワーの操作はどうだったのか、色々考えてしまう。フライトレコーダのデータが読めていれば原因は相当のところまで絞られているとみられるが発表がまだないのはどういうことだろうか、政治的な考慮があるのかもしれない。
ともかく発表が待たれる。

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2021年2月27日 (土)

UNITEDのBoeing777-200のエンジンが飛散して

つい数日前の2021.2.20,米国デンバーからホノルルへ向かうユナイテッド航空のボーイング777-200の右エンジンが離陸直後に分解しはじめ、地上に部品がばらまかれてエンジンから出火した。機体は急ぎ空港に戻って無事着陸できたが燃えるエンジンの映像が世界に衝撃を与えた。
直接の原因はファンブレードの破壊だった。日本でも昨年末の2020.12.4、羽田に向けて那覇を離陸した777-200の右エンジンが離陸直後United328 同じような状態になったが無事着陸できたトラブルがあったばかりだった。やはりファンブレードの破壊で引き起こされており、エンジンは2つのケースともプラットアンドホイットニー(P&W)製のPW4000-112のエンジンだった。
日本の航空局はこのユナイテッドのトラブルの報を受けて直ぐにPW4000-112のエンジンを付けた777に飛行停止の指示を出した。ユナイテッドのPW4000-112エンジン付き777-200は3年前の 2018.2.13、同じハワイ線でホノルル着陸寸前に似たようなファンブレードの破壊によるエンジン分解が起こっていた。この時は検査にミスがあって傷のあるファンブレードが検査でひっかからずに飛行に供されていたのが原因とされていた。
要するに、PW4000のファンブレードに問題がこのところしきりに起こっているということになる。
777が初めて飛び始めた時(1995年)の型式が777-200で最初の機体にはこのPW4000-112が付けられていた。このエンジンは当時最大の推力を持つファンエンジンでこれを実現するために色々な工夫が凝らされていた、その一つが今回破壊に至ったファンブレードだった。
Pwblade それまでのファンブレードはファンの途中にシュラウドまたはスナバと呼ばれる支えがぐるりとついて剛性を高めていたがそのための空力的ロスや重量増が避けられなかった。更に巨大なエンジンを実現するためにこのスナバの無い形式が検討され、幅広で中空のチタンブレードによりこれを実現した。P&Wとロールスロイスはこの方式としたがGEは全く新たに開発した複合材のファンブレードを採用してこれに対抗した。3つ巴となったエンジンメーカーの戦いは先行したP&Wが初めは有利だったが、初期トラブルを克服した最も軽いロールスのエンジンが多くの顧客を獲得するようになり、また777-200の発展型である777-200LR/-300ではGEの独占供給となりP&Wエンジンは777では少数派に転落した、という経緯があった。
今回のトラブルではチタンブレードの疲労破壊がその原因と疑われている、少なくとも前2回のトラブルではそれが明瞭になっている。金属部品の宿命でもある。ファンブレードは鳥衝突や砂吸い込み等で傷つきやすい、かなり高価な部品でもあるのでやたら交換するわけにもいかず慎重な検査を行いつつ飛行を維持するということが続けられてきた。それがこのところ破綻し始めているということのように見える。(写真下は昨年那覇でブレードが飛散した事故エンジンのブレード断面写真、事故調による事故の速報より)

ちなみに第2世代の777のエンジンとなったGE90はあのつぶれてしまった日米共同プログラムYXX/7J7のエンジンとして、GEが開発を進めていた複合材プロップファンGE36がその土台となっている。ここにもYXXという消えていったプログラムの残しえた技術がその後の航空機開発に残したものを見ることができるように思える。複合材ブレードなら疲労破壊から逃れられる。

今回のトラブルは、最早古くなってしまった777-200という機体の退役を早めるだけかもしれない。ここに至る時の流れを、こんな風に眺め行くのも感慨深い。

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2021年1月13日 (水)

インドネシア・スリウィジャヤ航空SJ182便の墜落

時間が出来たので1月9日に起こったインドネシアの墜落事故の状況を調べ始める。気になっていた。
Map2 インドネシア・スリウィジャヤ航空SJ182便ジャカルタ発ポンティアナック行き737-500が現地時間9日14時35分(7:35UTC)ジャカルタ空港を離陸Flightradar24 した5分後海上に墜落した。乗員6名乗客56名全員が死亡したとみられる。フライトレコーダは12日現在未だ回収されていない。
Flightdataリアルタイムで地上に送られ残されたflightradar24の高度速度データを見てみると最後のところが見にくいのでデータを一々読み取って表にしてみる。速度と高度の減り方が何となく変だ。位置エネルギーと運動エネルギーをそれぞれ出してグラフにしてみると何となくわかる。高度が下がり始め操縦輪を引いて保持できなくなって速度もみるみる下がり最後は失速してスピンに入ったのだろうか自由落下のようになり海面に激突しているようだ。これだけ見ると両エンジンが突然同時に出力を失ったようにも思えるがそれにしても高度の落ち方が急すぎる。燃料系統の深刻なトラブルに加えて何かが起こったのだろうか。滑空して着水という手もあったのだろうが、あまりにも急でとっさの処置がうまくできなかったようにも見える。雷雲が所々にあり天候はいいとは言えないが旅客機を墜落させるほど07utc08utcame とは思えない(下図:墜落当時の雨の状況)、これくらいはこの時期ここではよくある天気と思える。また737か、というところがボーイングにはつらいだろう。泣きっ面にハチの様相だ。
ともかくフライトレコーダが回収されないと原因究明は難しいだろう、発見を期待するばかりだ。

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2020年6月15日 (月)

パキスタンでA320が墜落

 

新型コロナで航空輸送はばったり旅行客が減り何処も経営が苦しくなっているようだがここへきてパキスタンで旅客機が墜落し百名近い人命が失われた。この時期にしては結構な数の乗客が搭乗していたことになるが、パキスタンでは感染者が増加している中、経済が持たないと5月9日にロックダウンを解除した、それがそれなりの搭乗者のある運航をもたらしていたのだろう。パキスタンでは5月上旬に感染者が2万5千人位だったものが6月初めにはおよそ8万人まで急拡大している。経済と感染抑制を両立できない厳しい現実がここにはある様だ。

5月22日現地時間14:40頃(0940UTC)、カラチの国際空港近くにパキスタンのフラッグキャリアであるパキスタン航空の国内線エアバスA320が墜落した。フライトレコーダーやボイスレコーダーはすぐに回収され解析中だがまだ一向にそれに基づく速報が出てこない。取りあえずここまでの公開情報からわかることをまとめておくと以下の通りKarachiia になる。パイロットエラーの疑いが濃厚のようだ。機体は2004年製で機令が15年位と少し古いが3月に(定期の)検査をしたところで、特に問題は報告されてはいなかった模様だ。
機長はこの会社で最も経験豊かなパイロットだったようで(機長は54才、17000時間の飛行時間(A320の4,700時間を含む )を持つ)、気象条件も晴れで特に問題無ない状態でカラチ空港に着陸しようとしていた(カラチ空港METAR では 9:25で OPKC 220925Z 202005220g1 24011KT 7000 NSC 35/24 Q1004 NOSIGで 雲も無くほぼ正対の風が5.6m/s位で視程も7kmと良好な気象条件を示している)。
アプローチの高度が通常よりもかなり高かったため管制は注意したが問題ないと機長は応答しそのまま飛行した。高いまま着陸しょうとしたためかタッチダウンのポイントが滑走路の半ばくらいになってしまっていたが何故か脚を下ろしていなかった状態で接地した。管制に何の連絡もないため着陸装置に問題があって脚が出なかったとは考えにくい、脚の出し忘れと推定される。管制との交信の背後で警報が鳴っていたのが認められたとの記事がある。
ナセルが接地しゴーアラウンドしようとしたが跳ねて2度目の接地をおこないまたナセルを滑走路に打ち付けた後やっと上昇に転じた(生存者は3回の接地衝撃があったと証言している、左右エンジンナセルに接地の差があったのだろう)。この時地上から両エンジンからのはっきりとしたオイル漏れが確認されており、エンジン下部が両エンジンとも破損したと推定される。直後はエンジンは一応動いていたものの高度はあまり取れず小さな場周パターンを描いて再度着陸しようとするがついに両エンジンが停止し、滑走路までたどり着けずに手前の住宅密集地に墜落した。乗員乗客99名のうち生存者は乗客2名のみだった、というところが事故のあらましのようだ。
ここまでのところではこの超ベテランの機長の強引な飛行と脚下げ忘れというミスがあったことは明らかなようだ。脚下げ警報が鳴り響いていたことが管制との交信でも確認されており全く警報の言うことも聞かない飛行だったようなのも驚く。
何故機長がここまでの振る舞いをしたか、まだ解らない。
おやと思うのは公式以外の解析が思いの外素早くネットにアップされ事故の飛行をそれらしく再現して見せていることだ。Flight24等で公開されている機上から送られてくるデータや管制との交信データをもとに作成されたシミュレーション画像がYoutubeにアップされていて、それらしい、これは相当の知識がないとできない解析を行っているように見える。そんな目がある中では公的機関の事故解析もいい加減なレポートは出せなくなっている、そんな時代なのだろう。Youtubeは:
https://www.youtube.com/watch?v=76osJupy_P8/
パキスタン航空機による脚下げ忘れ着陸は、1986年2月,747でイスラマバード空港でも起こっている。同じことがまた起こったという内部の声もある様だ。
上記のそれらしいシミュレーションを見ても結局のところ分からないことが次々に出てくる、最初の脚上げで接地したのは純粋にパイロットのミス(コパイも含め)か或いは何らかの機器トラブルが発生していたのか、管制にパイロットからトラブル発生の報告は墜落寸前まで行われていないのは何故か、滅多にないと思われる旅客機の脚上げ着陸が以前にも同じパキスタン航空で起こっていたのには何かまだ改善されていない体質がこのエアラインに残っていたのか、1回目の高すぎる着陸進入でパイロットが管制の指示をまともに聴いていないようなのは何故か、等々と幾つも疑問が湧いてくる。
フライトレコーダーやボイスレコーダーで事故の詳細状況が公に明らかにされた後、解決さるべき、組織やコーディネーションや風土等の人の関わる問題がそこには横たわっているように思われてならない。こんな事故を経てエアラインは安全になっていくのだろう。

 

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2019年7月 8日 (月)

久し振りの東京

 

10日ほど前久しぶりに東京へ行った。人が多いのにはやはり疲れた。
往きはLCCのピーチの格安切符で成田経由だ。会合が始まる13時には飛行機に遅れさえなければ十分間に合うはずだった。LCCは折り返しはややきつめのタイムスケジュールで運航されており朝の便が遅れるとその日はその機体の便は全て遅れる、そんなことから朝の便のタイムキープはかなりしっかりやる、それを信頼しての選択でもある。懸念は天候だった。台風崩れの熱低が気になっていたが、それではなくてG20大阪サミットのセキュリティで到着遅れ、出発遅れ、が朝から起こってしまった。機体は関西から飛来したが確かにこの日は大阪G20の初日だ。福岡空港でもゲートでブザーが鳴ってボディータッチを受けたが聞くとG20で感度を上げているという。ベルトのバックルが引っかかったようだがこんなことは初めてだ。とにかくG20で遅れたというとどうしようもない、受け入れるばかりだ。
座席で気づいたのは非常口のところは座席間隔がかなり広いということだ、LCCのハイピッチではそれが余計に目立つ。次にLCCに乗る時は非常口横の窓側の席にしよう、未だに新しい発見をするのがうれしい。

到着が40分くらい遅れ、予定していた京急のアクセス特急羽田行きには間に合わず、金を余計に払ってでもJRの成田エクスプレスにしようかと心が動いたが、隣の窓口のバス会社に試しに聞くと東京駅まで1時間半では行きそうで京成バスは1時間でとも言う、1000円というのが魅力的でもありバスを選択した。
Shuttlebus 今回は空港内の窓口で予約して乗車券を買い求めたが1000円バスは予約切符を買わない方がむしろいいようだった。ターミナル1では31番乗り場で待っていると次々と来る幾つかのバス会社のバスにその場での現金支払いで乗れて、これが良さそうだった。今回はすぐ来たバスはやり過ごして少し待って予約の京成バスに乗ることになったがそれなりに走行技術が高く結局1時間かからずに予定より早く八重洲北口まで到達した、悪くもない選択ではあった気がする。約束の食事場所には数分遅れで到着できてめでたしとなった。前にも思ったがこの1000円バスは信頼感が思いのほか高い。成田‐東京はこれに限るようだ。

今回の東京旅行では大学の同期会2つと学科全体の同窓会1つに出た。同期会の方は集まり方が良くなってきている。いずれもだ。仕事を終わってやることがなくなった人が増えたということかもしれない。それぞれに別の場所で同じに流れてきた時間を語り合うことが楽しい。立体的な生きる構図が見えてくる思いがある。
それにしても集まりがいいのは、会えるうちに会っておかないと向こうもこっちもいつ倒れるか分からない年代に差し掛かってきたということもあるようだ。今回は今年クモ膜下出血で倒れてしゃべることができなくなっている同期の友人も見舞った。いつ何時自分の身に起こるかもしれない。他人ごとではない。物故者も出て出席が物理的に可能な人数がボロボロと減っていく。避けようがない。

せっかく東京に来たのだからと丁度開催されているクリムト展を上野に観に行く。開場前から長蛇の列だ、とにかく並ぶ。入場が始まっても入場制限をかけていてすぐにはは入れない。女性の数が多い。観客に馬力がある。しっかり見ている。東京という街のエネルギーを感じる。
見たことの無い精緻な絵などずいぶんと出品数も多いが、これは、と思ったのは小さな赤い手帳だった。大きな天井絵や壁画を作るにあたっての構想図が小さな手帳に描かれている、なんだか普通だ、発想をまとめるに一目でわかる小さな絵からスタートしているところに親近感を覚える。これでいいんだ、そう思う。


帰りはJALのマイルフライトで要するにタダだ、こんな旅にはあまりお金をかけられない、しかし自分自身の時間の旅のようでもあり貴重だ。
3時間くらい前に羽田に着いたので前の便に変更しようとするがここでも長蛇の列だ。やっとの思いで1便前のに変えたがこれがなんと到着遅れで出発が50分近く遅れてしまった。元の便も15分位は遅れたようなので福岡着はそれでも30分位は早くつけたのだが何だかくたびれもうけだ。
東京という街の人の多さには改めてうんざりする。街の能力の限界に近付いているのではないか、そう思ってしまうほどだ。

いい旅というものでもない。しかし思い出に残ってしまう旅なのだろう、こういう旅は

 

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2019年3月17日 (日)

エチオピア航空のボーイング737MAX8が墜落

またボーイング737MAX8 が墜落した。もうかなりな騒ぎになっている、ここらで状況を整理してみてみたい。

現在までに明らかになっているエチオピア航空の墜落事故の状況は次の通り:
2019年3月10日(日)現地時間午前8時38分(5:38UTC)ケニアのナイロビ-ジョモ空港に向け エチオピアのアジスアベバにあるボレ国際空港を離陸したエチオピア航空ET302便

737max

(ボーイング737MAX8)は離陸後約6分で連絡が途絶えその後墜落が確認された。乗客149名乗員8名合計157名全員が死亡した。
離陸時の気象は空港のMETARによれば 5:00UTC 向い風10kt(5m/s)視程10㎞以上 2500ftに雲量1/8~2/8 気温16℃露点10℃気圧1029hp、6:00UTC 向い風8kt(4m/s)視程10㎞以上 2500ftに雲量1/8~2/8 気温18℃露点9℃ 気圧1029hp で特に問題となる気象条件ではない。パイロットはエチオピア航空からは飛行時間8000時間以上のベテランとあり、こちらも特に問題となる情報は今のところない。機体はボーイング737MAX8、2018年10月30日にボーイングで初飛行し11月15-17日にエチオピア航空に引き渡され、17日からすぐに運航が開始された。製造番号は7243 243番目に製造された機体と見られる、機体の登録番号は ET-AVJ エンジンはCFMのLEAP-1B双発。運航開始から4か月で墜落した新鋭機ということになる。整備上も問題となる報告はなかったとエチオピ航空のCEOは述べている。

Debri

事故の目撃談がいくつか報じられている、6人位の目撃者からReuterが聴いた話では大半の人が尾部から白い煙を吐きながら頭から墜落した、墜落前には音には気づかなかったと述べている、空中での爆発はなかったようだ。2回くらい旋転しながら落ちたという話もある。地面に激突して大きな爆発を起こしたとも語っている。
事故現場では機体は細かい破片になっており墜落の激しさを物語っている。
管制との交信では離陸後3分には機長はパニックになったような声のトーンで着陸の要求を伝えてきており、管制官も機体が上下に振動するのを確認したという(14日付Newyork Times)。

Etajvflight24

事故機の飛行データはフライトレコーダとボイスレコーダーが回収されフランスに送って読み出されているが解析作業はまだ公表されていない。一方飛行中の機体からリアルタイムで地上に送られてくる高度速度データがFlight24のサイトで公表されている。これでは墜落時の急降下までは記録されていない。

Data1a

更にこのデータから得られた高度変化の比較データが報道機関によって流されている。これによれば離陸直後から振動的な挙動を見せており、この周期が前回のインドネシアでの墜落事故機のデータによく似た周期の振動となっている、事故は類似しているのではないかとの指摘がある。このデータが明らかになった後でこれを根拠の一つとしてFAA(米連邦航空局)は同型機の飛行停止命令をやっと発した。事故後3日たってのことだ。FAAは事故後ボーイングと歩調を合わせてとっていた機体の設計には何ら問題ないという姿勢をやっと撤回した形だ、ボーイングとFAAに癒着があるのではないかとの声もある。
振動するデータを見ると周期は確かに20秒くらいで1分周期くらいとなる所謂フゴイドモードや5秒以下の周期となる短周期モードという機体固有の周期とは違う周期になっていて(フライトコンピュータによる強制頭下げとパイロットが闘った)インドネシアの墜落事故と似た挙動にも見える。より詳細なフライトレコーダの情報の公表が待たれる。

今回も迎角センサーの誤信号による強制頭下げが飛行制御システムから発せられてこれが原因でインドネシア機と同様に墜落したと考えることもできるが前回の事故後強制頭下げ解除の手順はエチオピア航空のパイロットにも教育されており解除するだけの時間はあったが墜落していることを考えると更なる困難がパイロットを捉えていたのではないかとも懸念される。迎角センサーがそうたびたび誤信号を出すだろうか、そこも気になる。どこかに取り切れなかったソフトバグがまだ潜んでいるのではないか、そう思ってしまう。
ボーイングの失った信用はどこまで墜ちていくだろうか。
 

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2018年11月17日 (土)

Lion Airの737MAXが墜落,ボーイングに問題が

10月29日インドネシアでボーイングの新型機737MAXが墜落した。離着陸での事故ではなく離陸後しばらく飛行しての後の墜落で事故原因はまだ確定はしていないが新型機ゆえのシステムに一因する事故との見方が次第に濃くなっている。事故後16日目の11月15日に被害者遺族がボーイングを相手取った訴訟を起こした。近年にない展開となっている。
墜落事故の概要は以下の通り;
2018年10月29日(月)現地時間6時21分(世界標準時28日23時21分Z)インドネシア・ジャカルタのスカルノハッタ国際空港滑走路25Lをパンカルピナンに向けて離陸したLionAirの国内線JT610便(機体はボーイング737MAX8,登録番号PK-LQP)は離陸後程なくして6時32分に通信が途絶え海面に墜落した。乗員8名乗客181名全員が死亡。天候は2000ftにやや雲がある程度で視程は8kmあり問題となる気象条件ではなかった。墜落場所は水深30-35mの海上で順次遺体や残骸が発見されている。フライトデータレコーダは発見され解析が進行中だがボイスレコーダは未だ発見されていない。残骸は細かく分解したものが多く衝撃が激しかったことを物語っているという。
パンカルピナンはジャカルタの北約450kmのバンカ島にありバンカ・ブリトゥン州の州都となっていてこの航空路は頻繁に航空機が利用される路線だった模様。事故機は月曜早朝の便で満席だった。

737max

737MAXという機体はボーイングの最新型の737で所謂リエンジンとして従来の737-800等の737NGシリーズのエンジンをバイパス比の大きい最新の低燃費エンジン(LEAP-1B)に変えこれに伴う改修を色々施した新シリーズの機体だ。2017年の5月から各航空会社に引き渡しが開始され事故機は今年8月に受け取って運用に供され始めたばかりの機体だった。日本国内ではまだ運用されてはいないが世界中で既に200機以上が運航している。

Flightaware1

フライトレコーダのデータは未だ公表されていないがこのような場合も通常はADS-Bで地上にオンラインで送られてくる飛行軌跡データをFlightaware等のサイトで入手して調べることができる。今回はこのADB-Dデータにエラーが多くデータの元即ち機体のセンサー系統に何らかの問題が生じていたことが推察されている。事故機のパイロットからは機体に問題が生じたので直ぐに引き返して着陸したいとの連絡が管制に入っていたという。
この機体による一つ前のデンパサールからのフライトJT043では同様に離陸後ADS-Bのデータが乱れていたが8分後に安定し飛行を続けたらしい。Lion AirはこのJT043のフライトについて技術的な問題が生じていたと認めている。一部の報道では高度と速度の指示に問題があったと伝えられピトー系統の問題が疑われていた。
その後データレコーダが回収されて解析の一部が漏れ伝えられてきているがそれによれば事故機は事故のフライトを含め4フライトのデータに異常が認められているという。ピトーセンサーと共に迎角センサーの値が異常を示したようで事故フライトではフライトコンピュータが失速に入ったと誤って判断し自動で機首下げの強制コマンドを発しパイロットはこれを解除できずに墜落した模様と伝えられている。
直ぐにボーイングから737MAXのユーザに対し従来の737と違い737MAXでは操縦輪操作では失速回避の強制頭下げコマンドは解除できず別の解除スイッチを押す必要になったこれに従うようにとの注意喚起が出された。米連邦航空局(FAA)からもそのような時には手順に従うようにとの緊急改善命令(AD)が取りあえず出された。
事故フライトのすぐ前で問題が発生した別のフライトではパイロットが解除ボタンを操作して事なきを得たらしい。
一応フライトマニュアルのどこかにはそのような記述があったらしいがボーイングによる737から737MAXへのパイロットの転換教育課程にはそのような内容は含まれておらず、この内容を知らされずにパイロットは機種転換可能と認められていたのが現実だったようで、米国の操縦士協会からもボーイングに対し厳重なクレームが発せられている。
737MAXの迎角センサーが異常な値を出したという報告は米国のサウスウエスト航空からも出されていてこちらは強制頭下げコマンドが発せらるまではならず普通に飛行したらしい。
迎角センサーが壊れやすい理由についてはまだ明らかになっていない、鳥が当たったりしたのだろうかとの憶測もある。迎角センサーに異常が起こりやすい所に問題のある機体との印象も受ける。
失速時の強制頭下げコマンドが自動で発されるようになったのは、大バイパスエンジンになってエンジン径が太くなりこれを従来の主脚長さを変えずに機体に取り付けるにはエンジンナセルをやや前に出して上にあげる他なく、こうすると失速時の大迎角時に大きなエンジンナセルが出す頭上げの空気力モーメントが更に大きくなって失速から抜けにくくなる。このため失速を迎角センサーからコンピュータが察知した時は間髪を入れずに頭下げ操舵を自動でやるようにせざるを得なかったものと推測される。Tテールのディープストール対策に多用されるスティックプッシャーの発想なのだろう。こんな手順の変更はきっちりパイロットに周知されるようにメーカーは意を尽くすべきだったしそもそももっと安全な対策を考え出すべきだった、ここまでのところではボーイングに落ち度があったとしか言いようがない。
どうしたのだろうかボーイングは。そもそもが737シリーズの改修が限界に来ていたのに無理して大きなエンジンを付けてしまったことに無理があったようにも思えてくる。短い主脚が機体重量を軽くできるキーだったのでそこにこだわりたかったのかもしれないが思わぬところでほころびが出てしまったようだ。
時代は大きく変わっているそんな時代のコーナーに立っているのだ、いつもそう思い聞かせていないと誰でも間違いを犯してしまう、そんな時なんだ、今は。航空機事故は時代の教訓を示してくれる、そう思えてならない。

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2018年7月29日 (日)

ボーイング787に乗る

無茶に暑い日が続く。上空まで暑い高気圧が九州の上に居座って動かない。カスピ海辺りの高気圧がはるか北まで張り出していて固まってしまっている余波が及んでいるように思える。緯度に沿って高気圧低気圧と並ぶ並びが動かないので暑いところは世界的に見てもいやましに暑くなる。こんなのを崩してくれるのは台風くらいしかない。直接の被災地には大きな災いをもたらすがとにかくこの固まってしまった大気の配置を壊してくれるだろうと期待もしてしまう。
平均的には地球は暫く温暖化が進み極地でも生物の活動が活発となって酸素濃度を増やしてくれるだろう、そうすればまた少し涼しい地球が戻ってくるのだろう。数千万年単位ではこのくらいの昇温降温は恐らく地球はこれまでも経験し繰り返してきたのだと思う、少なくも恐竜が生まれたころの地球は相当に暖かかったはずだ。
温暖化が厭で地球の大気を人為的にコントロールしようとしてもとても歯が立つまい。おとなしくなすがままに従うことにならざるを得ないだろう、そういうことに人類は慣れてないのかもしれないが。温暖化、結構じゃないか、といってなんとかしのいでいくしかないしそれくらいは非力な人類でもできそうだ。

人類の技術なぞまだまだ全く大したものではない、いつもそう思っている。でも少しは

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進んでいるという技術に時には触れたくなる。航空機では787だ。ボーイングではかって777に続く機種は何かと長く議論が続いた末一時は低超音速を飛行するいかにもフューチャーリスチックな機体のプランになりかけた、しかしエアラインの反応がそこまではついていけないという雰囲気があったのかすったもんだの挙句 燃費の圧倒的に優れたところに技術のベクトルを合わせた先進機としての787の開発が決まった。ローンチカスタマーの一つはANAであり炭素複合材といい高容量のリチウムイオン電池によるシステムの全電化といいいかにも日本で育まれたと言える技術が大いに花開いた機体となった。よくぞここまで踏み切ったさすがボーイングという所がある。エアバスは一時従来機の改修で十分対抗できるとしていたがそのうちあっさり先進技術路線に切り替えて対抗機A350を出してきた。稀に見る大勝負に世界的航空需要の高まりとともに面白い展開なった挙句、両社とも大量受注を得て未来へと突き進んだ。787は初飛行後もリチウムイオン電池の不調やこれも先進化された大口径大バイパス比のファンエンジンが問題を何度も起こして必ずしもエアラインにとって楽な機体ではなかったように思う。しかしそれでも総デリバリ数は787は既に700機を超えた、787の飛ぶ風景はどこにでも見られる世界の風景となってきた。

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国内線に787が投入され始めてもう7年にもなるがまだ乗ったことがない。乗客としてで十分だから是非にも乗ってみらねばと思って過ごしてきた。このところ毎年6月には東京で同期会に幾つか出るべく東京を訪れている。せっかくだからと毎回テーマを見据えた東京旅行ともしていたが今年の目玉は帰り便にANAの787に乗ってみようというあたりにもあった。飛行機便は同期会出席というのでは高い切符で行くわけにもいかずLCCやスカイマークの早割を愛用していたが今年は5月に直前中止した粟島旅行で使うはずだったANAのマイルがフライトキャンセルでも幾ばくか戻ってきて片道分なら何とか使えそうという状況になりこの機会にと787便を抑えた。戻る日は午前中は都内を回って午後の便で帰ると考えていたが日が近づいてくると、去年の例からは結構疲れるし今年は梅雨明けが早く暑い日なたを歩き回るのは年齢柄やめたほうがいいかと思い始め、朝の787の便に変えてしまおうと考え直した。しかしANAのマイルフライトは変更受付が結構早めに締め切られる、電話した時にはもう締め切りを過ぎていた。電話オペレーターは当日変更でも十分席にゆとりがあるので問題ないですよと言ってくれるので、当日カウンターで変更する計画で福岡を出発した。気がかりなのは787は結構点検や整備の指示が出て機体のやりくりがタイトなようで本当に目の前に787が現れるかは保証の限りでないところでもあった。帰る日朝一番にホテルの朝食を食べて羽田に向かう。少し早すぎたかと思えば羽田

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の国内線カウンターには長蛇の列ができている。自動チェックイン機はずらりと並んでいるのだが結構切符の変更といったやややこしい相談の人が多いようで広い空港エリアのローカルな一部だけが混んでいるというちょっとアンバランスな光景が現出していた。時間はかかったがともかく午前の787便に変えられた、この日は間違いなく787のようだ。

 

ボーディングブリッジから機内に乗り込む、12Aの席で前から2つ目の入り口から入る。普通の感じだ。すぐのところに席がある、シートピッチが広いという感じでもない。

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座ると真横がロールスの大きなエンジンでファンが破裂すればブレードが飛んできそうな位置にある、あまり感じ良くはない。
機体は787-8, 335席の3-3-3配列、エンジンはロールスロイスTrent 1000-Hだ。
JAナンバーは見落としてしまった、ボーディングブリッジから入ると見るチャンスを逃しやすい、JA810A辺りかと思われるがよく解らない。
朝日を受ける側の窓だったので評判の液晶サンシェードも試す。

 

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窓の下のボタンで明るくも暗くもできる、なかなか面白いし外を見ながら日差しも和らげる、いかようにもできるところがいい。

 

シートは少しは違うが取り立てて言うほどのことはない。

 

トイレも普通だ。ウオッシュレットがあるはずというのは忘れていて試さなかった。

 

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室内騒音は静かといえばそうだが驚くほどでもない。

 

アスペクト比の大きな翼ではガストに弱かろうという懸念は乗った感じでは解らない、それなりにガスト軽減の仕掛けがはいっているのかもしれない。

 

 

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ちょっとずつ新しい感じがする、乗ってみる感じではそれだけだ、やはりエアラインにとっての燃料費節減が大きな魅力に違いない。

 

 

 

 

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しかしトイレに立つと後方座席がガラガラなのが目立つ、ぴったり需要にあった便にするのは簡単ではない、787も国内線でどう使うか難しいところがあるようでもある。

 

 

 



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ANAもJALに対抗してwifiは無料でつながる。ANAのアプリを使うと現在の飛行位置や高度速度などもスマホで表示できて面白い。787だけのサービスではないがここらも新しい。

 

未だにロールスのエンジンにいろいろ問題は出ているがよくできた機体と思う。

ロールスのエンジンは3軸形式(通常は2軸、JALの787で使われている2軸のGEエンジンは
問題ない)で丁寧な圧縮を行うことで燃費を向上させるという方式をとっているが構造が複雑になりトラブルが起こりやすいという面を持つ、今回の緊急点検はこれがもろに出た感じだ。

 

 

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中段のコンプレッサーのブレードにクラックが入りやすいことが最近明らかになり点検頻度を上げて怪しいものは速やかに交換せよという改善命令が欧州航空局から出され直ぐに日本の航空局も指示を出したということらしい。根本的なブレードの改良はまだロールス側で完了しておらず、少なくも今年中は点検頻度を上げてしのぐほかないようだ。7年たってもまだ固まらないところに先進技術の恐ろしさがある。しかし色々あった問題も順次解決して、前には進んでいる。

 

人類は少しずつ前に進んでいる、そう感じるところがあるうちは結局はいい世の中なのかもしれない。いつまで続
くだろうか。

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2018年2月26日 (月)

イランでATR72が墜落

また旅客機の墜落事故だ。今度はイランでATR72が山岳地帯に墜落し搭乗者全員が死亡した。世界でここ1年以上旅客機の墜落事故がなかったことの「つけ」がここへき

Atr72

て周ってきたような気持になる。ついこの前のロシアの事故の前の事故は2016年11月28日南米で起こった、ブラジル代表のサッカーチーム・シャペコエンセを乗せたチャーター機の墜落だった。もう随分前になる。
今回の事故は高山地帯への墜落だけにまだわかっていないことが多くあるが今手元で得られる資料を整理すると以下のような状況だ。
2018年2月18日イラン・テヘランのマハラバード空港を現地時間8:05頃に離陸し、南部の都市ヤスジュに向かって飛行中のイラン・アセマン航空3704便の旅客機ATR72-212が現地時間9:30頃、ヤスジュ空港の北東約15kmの山岳部に墜落した。乗員6名乗客59名計65名全員が死亡したとみられている(当初66名と報じられていたが乗客1名は乗っていなかったことが確認されている)。Irantuiraku_2

 

墜落場所は標高約4000mの山地で事故機の破片が散乱しているのが確認された。天候が悪く事故4日目の21日に救助隊がやっと徒歩で現地に到達し捜索と遺体の引き下ろし作業を行っている。フライトレコーダ・ボイスレコーダはまだ発見されていない。
この付近はアラビアプレートとイランプレートがぶつかるあたりで4000m級の山脈が形成されており地震も多い。
Flightradar24が入手した飛行中の機体から送られてきたADS-Bの飛行データからは標準時で5時55分59秒(現地時間9時25分59秒)の高度16975ft(5174m)が最後のデータとなっている。21000ftの巡航高度から降下をしていたところだったように見える。最後の管制との通信は現地時間9時30分にQNH1021のコールバックをしたところだという。9時34分のタワーの呼びかけには応じていない。

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9時27分頃の降下は約1400ft/minと読め墜落地点の標高は約13000ftであることから最後の通信の直後に墜落(山腹激突)したと想像される。最後の3分間のADS-Bの通信が切れている理由は解らない。
機長のHojjatallah Fouladは経験豊かなパイロットと伝えられ2013年には同型機で片エンジン停止でヤスジュ空港に緊急着陸も行っている。
アセマン航空はイラン3位の規模の航空会社で主に国内線を運航している。29機を所有しておりそのうち6機がATRとなっている。事故を起こした機体は機齢24年とやや古く更には昨年まで7年間フライトせずに保管された状態にあったがこれをリハービッシュして昨年11月から飛行への供用を再開している。事故機は数週間前に技術的問題を起こしていたという報道もあり、機体に何らかのハード的トラブルが生じていた可能性もある。
イラン核合意までは禁輸措置が取られていて部品の供給も困難だったが現在は禁輸も解け2016年にはボーイングから新型の737MAXを30機購入する契約を結んでもいる。それなりのエアラインと思われる。
事故当時の気象条件はやや厳しい。西から大きな雨雲が近づいており、ヤスジュ空港の現地時間9時30分(標準時間6時)のMETARは
OISY 180600Z 13004KT 9999 FEW035CB SCT040 OVC090 13/M00 Q1021

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で9000ft以上は一面の雲に覆われている、一部に積乱雲もある。雲中飛行だ。GSM気象モデルによる推算からは16000ftでは事故当時-5℃程度風速20m南西風と推測され着氷の恐れも考えられる。墜落が突然起こっている模様であることから雲中飛行で位置を誤り山腹に衝突したとするのがありそうではあるが、管制との交信では21000ftから17000ftへの降下を許可され降下が終わったあたりでADS-Bのデータが途切れておりそこらで何かが起こり更に降下せざるを得なくなり降下したところで山にぶつかったとも考えられる。何が起こったのだろうか。
フライトレコーダが見つかればより明確な原因追及が可能となろう。

禁輸制裁が続いたためイランの航空会社は部品調達がままならず苦しい運航を続けていたようでもある。未だに向上しない生活に現政権に対する不満が形を現し始め政府批判の動きが表面化してきたタイミングでこの事故ということもある。それみたことか、との批判も出かねない。今後どのように事故原因が追及されていくか、事実を見つめて素直に解明されるだろうか、イランがどうなっていくだろうか、注意深く見守っていくほかないそんな気にする事故だ。現代史の危ういところを突いた事故ともいえるような気もしている。

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