ネパールの旅客機墜落事故が気になっていて
2023年1月15日ネパールのポカラで旅客機墜落事故が発生してもう2週間経つが依然事故原因については明らかになってこず気になっている。ここらで現在得られる情報を整理してみる。
事故機はネパールの国内線でイエティ航空691便、機体はフランス/イタリア共同のATR社製72人乗りコミューター旅客機ATR72-500(エンジンはP&WカナダのPW127Fターボプロップ双発)、事故時の搭乗は乗員4名乗客68名で全員死亡。機齢は15年6か月で普通の感じだ。事故機は現地時間1月15日10時33分(4:48UTC、現地時間はグリニッチ時であるUTCに+5:45))カトマンズ国際空港を離陸し、ポカラ空港に向かっていたところポカラ空港北西の滑走路延長上の川の土手に墜落した。事故発生は11時過ぎとみられる。管制への異常連絡は無かった。ポカラ空港の滑走路は12-30(進入が120度又は300度の方向の滑走路)で、ポカラの管制は東南(30)からの進入を伝えていたがパイロットが直前に北西側(12)からの進入 に変更した。多くの機体は30側から進入しておりILS機器も30側に設置してある。当日の気象はポカラの6:00utcのsynopデータでは180°(南)の風5ktだから、若干の背風となる30側の進入を嫌ったとも思える。客室からの映像がFacebookのストリーミングに残されているが墜落寸前までは普通の飛行にみえる。地上から撮られた墜落寸前のビデオからはファイナルターンをしているところでバンクが増えてそのまま地上に突っ込んだように見える。
フライトレコーダとボイスレコーダは回収され間もなくシンガポールで解析されると伝えられている。当初はフランスに送られると伝えられていたがシンガポールで解析と決着したようだ。機体製造国の解析では中立性に疑問を抱いたのかもしれない。
機器の不具合については明らかではないが機上の飛行データを地上にリアルタイムで送るADS-Bの飛行高度速度データが異常で、送信も飛行途中で終わっており、少なくもこのシス テムには不具合があったことは明らかなようだ。このため事故があるとすぐに公表されるFlightdata24によるデータが今回は得られていない。フライトレコーダの読み取り結果公表まではこれ以上のことは解らないというのが現状だ。
機器の故障としてファイナルターン中の事故ということで、例えばファイナルターン中にフラップを下ろそうとしたが片側がうまく下りず片フラップになって操縦輪では負けてしまった、とかが考えられるがそこまでの故障がありうるのか、分からない。地上からのビデオ映像では失速-スピンというのでもないように見える。
副操縦士はこのフライトがうまくいけばこの後機長に昇格となることになっていたと伝えられており、事故機の機長はその最終判定役として振舞っていて操縦の修正が遅れたとも考えられなくもないが、安全優先は機長も勿論熟知しておりその線は薄いように思える。
どんな教訓をこの事故はもたらしてくれるだろうか、フライトレコーダとボイスレコーダ情報で多くの疑問が解かれると期待され、解析が待たれる。