2023年5月27日 (土)

九州国立博物館のアールヌーボーガラス展を見る 

欧州のガラス工芸の源流、紀元前14世紀のエジプトのコアガラスの手法で作られた脚杯(左下図)から始まるガラス工芸の展示がアールヌーボーガラス展とKoaglass0501a銘打って九州国立博物館で開催されているというので、5月の初めに見に行った。この時代にこんなものまで、と思うほどに古くからガラス細工の工芸がエジプト・中東・欧州で作り続けられてきているのに驚かされる。現代でも通用しそうな装飾も2000年前には作られている(右下図)。見ていくとこの長い歴史の上に19世紀末から20世紀初頭のアールヌーボーの時期にエミールガレやドーム兄弟による燦然たるガラス作品が生み出されてきたというその流れが理解できる、そういうことだったんだとの感がある。更にあのパリコミューンを生むことに至った普仏戦争によりガレやドーム兄弟の故郷の地はドイツに奪われるが却ってそれが彼らの作品Koaglass0501bを生み続ける強い意志をもたらすことにもなっている、驚くべき歴史だ。そんな戦争に明け暮れた欧州の雰囲気が今のウクライナ戦争にも漂っているところが見えてきて現代的な問題につながっているように感じられるのも面白い。

さてエミールガレだ。ガラス工芸の技の極致を駆使してガレは表現しているように見える、半端でない。ジャポニズムにも傾倒し伊万里焼風の作品もいくつか残している。昆虫や草花をデザインに取り入れることで他には見られない作品群(例えば左下図)を残してもいる、多才だ、圧倒的だ。
Irisbud0501g1a ーム兄弟の方はガレとは違って大衆化の道を進めたように見えてしまう、芸術性より日常使いの美しいガラス器を多く生み出しているように見える。それにしてもなかなかの展示だ。

見終わって、ベネチアがガラス工芸を誇り薩摩が切子を生んだ歴史の展開がやっと少し腑に落ちた気がした、そこには強いアイデンティティへの意志があったのだ、見るべきものは見るように努めねば、そう思う日々だ。

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2023年5月21日 (日)

6回目のコロナワクチンを打つ

昨日6回目のワクチンを打った。接種済証には バイオテック/ファイザー製コミナティ(2価:BA.4-5)とあり、去年の11月に打った5回目とほぼ同じワクチンの様だ。
もう副反応は出ないかな、と高をくくっていたが前回とほぼ同じで睡眠サイクルが乱れ、寝付いて2時間くらいで目が覚め2度寝してまた2時間くらいで目が覚める、翌日は寝不足のようで頭がぼんやりして気分が悪い、おまけに37℃位の熱が出るという有様だ。熱が出る分前回より少しひどいという気もする。今回は接種後解熱鎮痛剤を1錠機械的に渡された、前回までは希望者だけに販売だった、そんなところを見ても今回は熱が出るのが当たり前というワクチンになっているようだ。解熱剤を飲んでも気分の悪いのは午前中いっぱい続いた、午後にはすっかり良くなったものの、おかげで今日の午前に予定していた油山での鳥見の会には不参加とせざるを得なくなってしまった、まあしょうがないか、というところではある。
外に出ればマスクを外す人が以前より多くはなったが、店の中では殆んどがまだマスク姿だ、こんな状態はいつまで続くのだろうか、ゆっくりと戻っていくのだろうか。

思えば人類はAjisai0521a 地球上の生物の頂点に立ち何でも思いのままと奢っていた、それに一撃を加えたのが新型コロナウイルスであり、ボディブローのように攻め立てているのが地球温暖化ということになるのだろう。軌を一にして攻撃が起こっているように感じるのは、これまでの人類の振る舞いが曲がり角に来ていると思わざるを得ないということなのだろう。
一方で欧州のようにこの機に乗じて狡猾にふるまい時代の曲がり角で他を蹴落とそうとする意志がうごめいているようにも感じてしまう。
もっと吞気で心を許しあえる未来を描き続ける強い心が求められているように思えてならない。

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2023年4月27日 (木)

突然スマホが変調して民主主義の崩れていく様を感じる

突然スマホのスグ電が機能しなくなり更に電話に出るのが随分と出にくくなり、こわれたかとドコモショップに相談に行った。あれこれやりとりして結局こんなもんだというような回答でもう少し使ってみてくださいとあり、ちっとも改善されない。もう一か月半になる。かかってきた電話がまともにすぐには出られない状態が続いた。ところが今日になってまた突然に電話がすぐ受けられるようになってスグ電機能も一応回復した。自分で何をしたということもないので恐らくドコモ側がソフトのどこかをいじったのが波及したのではないかと想像している。使っているスマホは富士通のF-05Jという機種だ。2018年から使っているのでもはや古いと言われればそうだがそうポンポン買い替えねばならないとしたらそれも問題のようにも思う、生活の基本インフラになりつつあるスマホだ。更にはアップルとグーグルという2つの私企業にスマホのOS全てが握られているというのも異様といえば異様な世界だ、民主主義のかけらもない。とても優しいといえる仕組みではないしそれを変えようとするでもない社会を我々は選びつつあるような気がしてくる。


ウクライナにしろこんなことにしろ、民主主義の壊れていく様を眼前に眺めることができる貴重な時代に我々は生きているのかもしれない、じっくり眺めねば。

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2023年4月11日 (火)

チャットGPTで遊んでみる

このところ対話型AIのチャットGPTという文字をよく見かけるようになった。これは一度使ってみるかとネットで少し調べてみると特別なアプリをダウンロードする必要がないことが分かって、早速chatGPT  https://chat.openai.com

にアクセスして遊んでみた。何を聞いてもとりあえず回答が来るところが面白くて暇つぶしには随分といいような気がする。ただ、おかしな回答をすることがあり、それを指摘すると回答が間違っていましたと素直に謝るところが面白い。単純なAIではないような気がする、本当に人とやり取りしているような気がしてくるが、あるところまで来ると私は何者かを説明して、人ではないという。
例えば あなたは無能だ と投げかけるとこんな調子だ。
 
「 私はコンピュータープログラムであり、無能かどうかの概念はありません。私は人工知能を利用した自然言語処理システムであり、私が提供する情報や回答は私が学習したデータとアルゴリズムに基づいています。もし不十分な回答を提供してしまった場合は、適切な情報を提供できるように学習を続け、改善していくように設計されています。」

自己正当化が少々鼻につく。

また間違った質問をしても質問が正だとして答えてしまう
例えば 今年のWBCでアメリカが優勝した理由は? と問うと

「WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)でアメリカが今年優勝できた理由は、いくつか考えられます。

まず、アメリカが選んだ選手たちが非常に優秀で、様々なプロ野球リーグで活躍している選手たちが集まっていたことが挙げられます。特に、大リーグで活躍する選手たちが多数参加しており、そのレベルの高さが優勝につながったと言えます。

また、アメリカのチームは、経験豊富な監督やコーチ陣が指導しており、戦術や戦略に磨きがかかっていたと考えられます。さらに、チームの連帯感や協調性も高く、一体感を持ってプレーすることができたという点も、優勝につながった要因の一つでしょう。

最後に、アメリカのチームは、他のチームと比較しても非常に粘り強く、試合の終盤に逆転勝利を果たすなど、勝利に向けて最後まで諦めない姿勢が見られました。このような強い精神力も、優勝につながった要因の一つと言えます。」

おかしいと問うと

「申し訳ありません、私の先行きの知識に基づいて回答を提供したため、誤った情報を提供してしまいました。おっしゃる通り、2021年現在、WBCでアメリカが優勝していないことを確認しました。」

更に あなたの知識は2021年までのものということか? と問うと

「はい、私の知識のカットオフは2021年で、その時点までの情報しか保持していません。現在の情報については学習する必要があります。ただし、私は常に更新されており、新しい情報を継続的に学習しています。」

とくる。それではプーチンのロシアがウクライナに攻め込んだことは知らないのですね?と更に問うと

「はい、私はその情報を持っています。2022年2月24日に、ロシアがウクライナに侵攻したことは私の知識に含まれています。私が以前に誤った情報を提供したことを謝罪し、今後はより正確な回答を提供するように努めます。」

そうはいっても今年のアカデミー賞の作品賞は?と問うと

「私は2023年4月11日現在の情報しか持っていないため、今年のアカデミー賞の受賞作品についてはお答えできません。今年のアカデミー賞授賞式はまだ行われておらず、授賞式が行われた後に受賞作品が発表されるため、授賞式が行われるまでお待ちいただく必要があります。授賞式は通常2月下旬から3月上旬にかけて行われることが多いので、詳細については公式サイトなどで確認してください。」

とトンチンカンな答えしか返らず、その答えはおかしいと何度も問い詰めていくとついには

「申し訳ありません、私の回答が混乱を招いてしまい、ご迷惑をおかけしました。2023年3月上旬にアカデミー賞授賞式が実施されたことは承知しており、私の前回の回答は間違っていました。私は常に最新の情報を学習しており、日々新しい情報を取り込んでいますが、たまに情報を誤解することがあります。再度、申し訳ありませんでした。2023年3月上旬に開催されたアカデミー賞の作品賞は「The Power of the Dog」が受賞しました。」

と、正しい答えを語るようになった、と思ったがこれは2022年の作品賞だ、やはり違っている。言い訳を堂々と言うあたりは恐ろしくアメリカ的と思えてしまう。情報の入手元、文献なら出典を明らかにせず答えるのはどうしても回答の信頼性を疑ってしまう、そこらあたりがツールとしての大きな欠陥なのだろう。それにしてもこんなのがあると時間はどんどん過ぎて行く、時を吸い取られているのかもしれない。

 やりとりを続けていると妙な時代に入りつつあるような予感がしてくる。高級な詐欺師の弁舌はこうなのかもしれない。あまり楽しい未来はここからは見えないような気がしている。

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2023年3月31日 (金)

カメラが壊れる

近頃あれっと思ったことの一つにカメラが壊れるということがあった。8年くらい使っている30倍望遠のコンパクトカメラが動かなくなった。(添付写真)。予兆は少しはあったのだがまあ普通に使えていたものが半月ほど前、ズームするとピントが合わないことが多発し始めあれよあれよという間にスイッチを切ると レンズ異Camera0331ab 常を検出しました、スイッチを入れる時にも レンズ異常を検出しました と表示されて立ち上がりすらほぼできない状態になってしまった。キャノンPowerShotSX700というカメラだ。4年位前に似たような症状が出て福岡市にあるキャノンのサービスセンターに持ち込んで修理してもらったことがある。またかという感じでサービスセンターに持ち込もうとネットでチェックしていたらこのカメラの修理対応期間は2020年3月末までで修理は受け付けていない、という文字に行き当たった。部品をもうキープしていないということの様だ。要するに修理はできないということになる。買い替えるほかない。新品はとネットでみると現行モデルはSX720で5万円+位が実売価格の様だ。ちょっとキツイかと思ってしまう。野鳥の撮影にも使える望遠が便利でお手軽外出の時には重宝していた、無いというのはつらい。それではとヤフオクであたる。ヤフオクはあまり使わないが、最近やはり手持ちの一眼レフK-5でメインに使っていた200mm望遠ズームが動かなくなって、ヤフオクで探して2つ目にいい品物に当たったことがあり、オークションの品の説明文をよく読めばこれはいいのではないかというのはわかるような気がしていた。美品とあればいいもののようだ。わりに新しいSX620というのが出ているのを見つけていいかもしれないと入札して対応していたが期限ぎりぎりで出品者が安すぎると思ったかオークションを強制終了してしまうという事態に直面した。こんなことがあるのかと驚いたが、もう一つSX700の良さそうな出品も見つけてちょっと古いが美品であまり使っていないとあり良さそうな感触で入札した。思ったよりも高くはなったが競り合って13000円くらいで落札した。数日後に送られてきてみるとこれは当たりだった。これまで使っていたものと全く同じ型式だが、使った形跡があまり感じられなくて新品同様のようではある、どこかの店に残っていた売れ残りなのだろうかとも思ってしまう。
ともかく気楽なカメラ生活が再開して一件落着だ。
何やらまた一つ勉強した気もする。面白い時代だとも思い始めている。

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2023年3月20日 (月)

今年の芥川賞を読む

今年も芥川賞が発表される季節となって、どんな作品だろうと、掲載される文藝春秋3月号を予約可能となる日の朝一番に図書館にネット予約した。予約順は1番ではなく2番だったもののすぐに順番が回ってくる、さっそく読んでみた。今回(第168回、令和4年度下半期)受賞したのは井戸川射子「この世の喜びよ」と佐藤厚志「荒地の家族」の2作品でいずれもそれほど長い小説でもなく、1週間もあれば2つとも楽に読めてしまう。
「荒地の家族」から読み始めた、3.11の震災被Arechinokazoku 害者の直面した生活を描いている。非常にリアルな感じがする、楽しい場面は殆どなくてこれでもかとつらい現実が展開され続けていくが、とても誇張と思えないリアルさだ。重い。しかし情景がよく描写されていて、文章そのものがいい。作者の力量を感じる、さすが芥川賞だ。
「この世の喜びよ」はこれとは随分違っている、読後感として最初に感じたのが物語の無さだ、これは小説というものなのか、と感じてしまう。ショッピングモールの一角にある喪服店の店員という主人公の周りに流れていく日常の描写のみではないかと思ってしまう。2人称で描かれていて主人公をあなたと呼んでいる視点で読んでいくことになるのだが、なじめない、勿論面白い試みではあるがなじめなさはどうしようもない。小説の描いている世界へ引き込まれていく感覚をどうしても抱けない。こういう小説が賞をもらう時代になったのだ、ついてこれるかな、と言われているような気さえしてくる。

小説を読んで絵空事の世界に時々身を置くという疑似体験が自分としては精神的にいいような気がしてこれまで時々小説を読んでいたが、精神の活性化に必ずしもつながらない小説が出てき始めてるような気がしてきた。そういう時代なのだろう、映画を時折見る方に切り替えた方がよくなってきたか、そんなことも考え始めている。

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2023年2月26日 (日)

鳥インフルとバードウオッチング

コロナがパンデミックになったあたりから世の中が少し捻じれてきたような感覚に陥っている。まさかと思うことが次々に起こってくる。ロシアのこんなことが人類の歴史でまた起こるのかと思う血にまみれた侵略戦争、外国旅行の急激な縮退、国内でも旅行にかかわる事業の急激な縮退と収入を失う人々の急増、給付金不正受給が高級官僚まで手を染める、闇バイトと称した素人強盗の急増、etc,etc. うんざりしてくる。
そして思わぬ広がりを見せているのが鳥インフルエンザだ、それによる世界的タマゴ価格の上昇も目についてきた。コロナのパンデミックとどこかでつながっているような気がするが、そこらあたりの解説が見つからないことからなぜ今こんなに蔓延し始めているのかまだ解明が進んでいないように感じられる。
鳥インフルエンザは渡り鳥が運んでくるとされる。運んでくる元はどこなのだろうか、そこは鳥インフルだらけの土地なのだろうか、俄かに納得はできない、コロナと同じように鳥類の間で  流行が繰り返されているというだけなのだろう、人間がそうしたように移動を止めないとうつしあいは拡散してしまうというだけのことな のだろう。
一体鳥インフルで 死んでいる野鳥は何が多Birdflue
いのだろうか、と調べてみる。環境省のホームページとそれを引用する形で農水省のページにもデータがある。この冬期のデータを2月半ば時点まで調べて図にしてみると最も多いのがナベヅルで28%、次がハシブトガラス19%と分かる。スズメは感染死の報告がないが普通に街中を飛び回っているハシブトガラスが随分多い。ハシブトガラスが渡り鳥を襲っているのかもしれないが渡り鳥だけが原因ではないようで留鳥にも保菌鳥が居続けてるのではないかと思えてくる。こんな風に蔓延してくると鳥の糞を踏む恐れのあるバードウオッチングは控えましょう、というおふれが出てもおかしくなくなるような気もしてくる。
 
何が起きてももう次第に驚かなくなってきている。野鳥を見る趣味もどこかでおしまいにしなければならなくなるかもしれない、何でも受け入れて生き延びていくのがこれからの生き方になっていくのだろう。

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2023年2月14日 (火)

フランシス・フクヤマの「歴史の終わり」の後で

フランシス・フクヤマの「歴史の終わり」の後で を読んでいる。
冬は本を読む時間を取りやすい。適当に何冊かを読んでいた時この本を引用していたり紹介していたりする場面に幾度か出くわしてこれは読んだ方がいいかと図書館の予約の列に並んでみた。先週やっと順番が回ってきて読んでいる。マチルデ・ファスティングというノルウェーの経済思想家の質問に答える形で進んでいく。フクヤマは何冊もの本を書いており、質問者はそれらを取り上げながら問いを発し続けていくので、フクヤマが全体として言いたいこと考えていることが直接的に語られていて手間が省けるという気がしてくる。
まずは「歴史の終わり」とは何かRekisinoowari 、これは簡単で、自由民主主義(liberal democracy)がこれからも含めた人類の歴史の中で最後の政治体制となる、ということだという。一昔前は左派のインテリは共産主義が最後の形と考えていたが今そう考えるものは誰もいない、というわけだ。なーんだという感じだ。
では、世界の色々な国が自由民主主義になかなか到達できないのは何故か、ということになる。それを何回も形を変えて質疑応答している。自由民主主義が根付くにはナショナル・アイデンティティに基づく国民国家と強固な制度を固める体制が必要で、歴史的には権威主義などの形を経て最後に到達できるもの、と答えているようだ。
ナショナル・アイデンティティという言葉が曲者で、これはフクヤマがニューヨークという街で育ったということが大きく関係しているように思える。この地ではアメリカ人とはアメリカとしての共通の理念を共有する人という考えが強く人種や出身国、宗教などの重みはほとんど感じられないという、このイメージがナショナル・アイデンティティということなのだろう。偏狭なナショナリズムとは明らかに違うものだが、かなり近いところにあるような気もする。ナショナル・アイデンティティがあってのその基盤の上での自由民主主義ということのようだ。
更に腐敗を抑え込む体制というのが重要と何度も述べているように見える。権威主義が倒されてさあ自由主義だとなると、不正が横行し体制を私物化しようとする動きが現れてくる、これを排除しなくてはうまくいかない、としている、確かにそうだ。ここでつまずく国が多いような気がするし、もう大丈夫となってもまた腐敗が頭をもたげるようにも思える。
 
自由民主主義に対する脅威としてはポピュリズムの拡散をあげている、偏狭なナショナリズムなどで多数の支持を得て権力を握ると権力を私物化し制度や司法を破壊していく、というのがその特徴としている。現代の社会の仕組みを、そうみればいいのか、と説明してくれるところが、読んでいて気持ちがいい。
EUのような各国をまとめて統合していく方向に未来があるという見方には否定的で、ナショナル・アイデンティティが曖昧な形となってうまくいかないだろう、としているようだ。EUの人々がフランス人やドイツ人でなくヨーロッパ人という意識を強く共有できるとは思えない、ということのようだが、この本はウクライナの戦争が始まる寸前に書かれており、現在ではヨーロッパ対ロシアという形が明瞭になってきて、この戦争がEUの理念を強めてきているように思えている。今フクヤマに聞けば別の答えが返ってくるかもしれない。
また、経済学という学問では経済的利益最大化で行動する個人というモデルの上で学問が組み立てられているがそれは正しくない、個人の行動の原理には、個人の価値や尊厳への承認要求を満たすという個人の魂が大きく関わっている、(これをテューモスというプラトンの表現で表している)、これを考慮に入れない規制緩和などを軸とする新自由主義経済は、富の集中・格差の増大などの社会的歪を生み、うまくいかなくなる、ともいう。
なかなか面白い本だ、フクヤマは非常に多くの本を読み込んでいると感じられ社会の仕組みや出来事のなりたちによく考えが廻る、知の巨人という言葉がふさわしい人のように感じられてくる。
それにしても最近感じる、日々の買い物に顔を出す店の小さなごまかし、政府の広報の小さなインチキ、通産官僚によるコロナ補助金不正受給、自衛隊員が闇バイトで強盗一味に加担、といった今までは目にしたことのなかった社会のほころびが、そうか、これがフクヤマのいう腐敗の始まりか、こういう風にして自由民主主義体制は崩れはじめていくのかもしれない、と頗るリアルに感じられてくる。
いい本だ。

 

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2023年2月 5日 (日)

政府の「エネルギー価格の負担軽減策」広告にごまかしが

 この国は少しづつおかしくなってきている、そう感じることが目につき始めた。新しい戦前とはこういうことかもしれない。

今日は新聞の資源エネルギーSigennenerg0205a2 庁の全面広告で 政府は「エネルギー価格の負担軽減策」で皆様を支援します、と出ていて、なかなかやるな、と思ってしまった。電気代とガス代の値引きを1月使用分(2月請求分)からはじめる、1kwh当たり7円、と書いてある。値引きの確認は利用明細などで とあるので手元に届いたばかりの九州電力の1月分電力使用料請求はがきを見てみるがそんな値引きの記載はない。九電の電話サービスに問い合わせてみると2月分(3月請求分)からだという、話が違う。資源エネルギー庁窓口に電話で問い合わせてみる。すると、1月から9月までが値引き期間ではあるが電力業者によっては2月から10月にしているところがある、期間は同じですのでそこは。。。ということらしい。新聞で宣言したことでも守られなくても多少は、ということなのだろう。1月の電力使用量は寒波もあって跳ね上がっている、1月の使用量*7円は10月のそれより明らかに多い、それを意図的に避けたように見えてしまう、形だけは取り繕おうとしているところが姑息な役人らしい。一種のごまかしなのだろう。


一昨日のマツモトキヨシのごまかしも今日の資源エネルギー庁のごまかしも、どこか似ている、ばれないだろう、このくらいはインチキしても大丈夫だろう、というところだ。こんな風にして世の中は少しづつ少しづつ曲げられていくような気がしてくる、行きつく最後は戦時統制経済だろうか、ちょっと寒気がしてくる。

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2023年2月 3日 (金)

値上げの動きがあちこちで目に付く

値上げの動きがあちこちで目に付く。中には店内の価格表示は安いままでレジを通すと値上げされた価格で処理されることがある、詐欺といってもいい、もしかしたら意図的にミスしたようにふるまっているのかもしれない。こんな店には2度と来るものかと思ってしまう。そんな目に今日マツモトキヨシ長丘で遭わされてしまった。店内の棚の価格表示は税込みで437円なのにレシートをみると税込みで481円が引かれている。Paypay払いだったので直ぐには気付かず店を出るところで何となく変な感じがしてレシートを見直して分かった。レジへ戻っておかしいというとレジ打ちの女性は対応できず上の人という人が調べてくれてPaypay返金処理して新たに手作業で正しい価格で打ち直してくれる。慌てて謝罪する様子もなく、何となく、ばれたかという風なところを感じてしまう。そういう店なのだろう。
久し振りの値上げラッシュはどこか人の心を蝕んでいくのかもしれない。寒々とした光景がこれからも展開されていくのだろうか。

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